鬼 の ぜ ん い つ さ ま 。【鬼滅の刃】

無垢なる衝動 ページ10

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「っ待、て……鬼……！！！」



彼の背後から、まるで絞り出したかのような声が聞こえた。
振り向く事はしない。出来ない(・・・・)。


私を抱く力が、先程より強く増したから。



「くそ、ふざ、ふざけんなこの鬼が……！！俺を舐めるなよ！！たかが腕一本、」



「お前、感覚鈍過ぎじゃない？」



ごとり



例えるなら、重たい球体が落下した音。
柔くもなく、硬い何かがごろごろと転がる音。



目が合った。



先程まであの男の人の首の上についていた頭が床に



「………っっ！！！う、ぅあ……ッ！！！」



目がこちらに、理解が追いつかず彼の目が、こちらを不思議そうに見つめて、やがて身体の方はドシャリと支えを失って崩れ落ちて、


何も分かっていないのは斬り落とされた頭だけだ(・・・・・・・・・・・)



「ここはもう駄目だなぁ……新しい住処を探さないと」



嗚咽し、涙をぼろぼろ零す私を抱いて彼は歩く。

この鬼の目にはもう先刻斬り落とした男の首なんて映ってない。
前を向いて、血に塗れた薄暗い廊下を進み、私を連れて、また何処かへ連れて行く



「俺はただ、平和に暮らしたいだけなのにな」



そんな願いが、血に汚れた存在(おまえ)に叶えられる筈なんてないのに。



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