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「俺に言ったんだ、あの人。あんな強い女の子見たことないって。ナンパしてた不良数人を締め上げたって笑」




うわ、そんな前のこと・・・


あれはよく覚えてる


少しやりすぎたかなってくらいだったから笑




え、てことは、宏光さん・・・




「私、その現場、見られてたの・・・?」



「そうらしいよ。言わなかったんだね、ずっと。ミツ先輩、言ってたんだ。あの姿がずっと忘れられなかったって」




ごくりと自分でも息を飲むのがわかった


会社で会う前から知られていたなんて、聞いたことなかったな・・・


運命のように感じられて、胸が高ぶった





「正直ね、負けたーって思った。だって、不倫する人って自分の欲を満たしたいだけだと思ってたのに、あの人は違ったから」




でもね、と射抜くような視線をこちらに向ける



「Aさんだから、負けたくない、絶対に俺のものにしたいんだ」





ただでさえ、シーンとしている資料室が更に静まり返った気がした


その代わりに、彼の言葉だけが何度も頭の中でリピートされる


さっきまで感じていた孤独な部分に、何かが埋め込まれていくような感覚に陥る





「俺、昨日ほんとはそこまで酔ってなかったんですか。飲んだには飲んだけど、強い方だから。なんか急にAさんに会いたくなって、気づいたら家の前まで来てて・・・。もし身体の関係持ったなら俺のこと好きなんじゃねかな?なんて軽い考えだったんです。でも、昨日、心が手に入んねぇと意味ねぇじゃんって思ったんですよ・・・」








私と同じだった


彼もきっと私と同じ苦しみを味わってるんだと


好きな人には自分でない誰かが心の中に住んでいる









寂しくて、苦しくて、切なくて_____

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作者名:たまっち | 作成日時:2020年1月21日 0時

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