【d!】ストーカーな君【zm】 (ページ11)

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その日は、朝から体調が悪かった。

鏡で自分の顔を見ても、土色をしていることが分かる。

目の下の隈を化粧で隠し、頭痛に気付かない振りをして、会社へ向かう為家を出たのだ。
今日は電車で行こうと、そう考えながら。

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「A、大丈夫？」

その声とともに、机の上に缶コーヒーがコトリと置かれた。

パソコンから目を離し、声の方を見ると、そこには同じ部署の先輩が。

この先輩は、兄弟が多いらしく、しかも長男らしいので、会社でも“兄さん”と呼ばれている。因みに私も兄さんと呼んでいる。

「大丈夫ですよ。いつも通りです。コーヒーありがとうございます。」

財布を取り出そうとすると、兄さんが慌てて止める。

「律儀やな～ほんま。気にしなくて良いのに。後輩は大人しく奢られといて。」

ひらひらと手を振りながらこの場を後にする兄さん。対応が大人だ…

私は貰ったコーヒーを一口飲むと、またパソコンに目を向けた。
相変わらず、頭痛の主張は激しいが。

いつもより少しだけ早い時間に仕事を終わらせ、明日から2日間の休日に胸を踊らせながら会社を出る。

今日は珍しくお持ち帰りの仕事が少ない。この五日間、頑張った甲斐があったよ。

「おーい！A！」

後ろから声が聞こえた。
振り向けば、その声の主が駆け足でこちらに向かってくる。

「飲み行こうや！」

ガシッといつものように肩を組まれる。

私は女性の中では背の高い方だが、こいつには数センチ差で負けている。
その為、肩を組まれればこいつは当たり前のように体重をこちらに掛けるので、やめてほしい。

「ちょ、重いシャオロン。」

シャオロンとは、高校が一緒という事もあり、この会社に入った時から仲が良かった。高校時代に接点があった訳では無いのだが、他の初対面の人達と一緒にいるより落ち着くのは確かだ。

「ん？Aお前気分悪いんか？」

私の顔を見ると、彼の緩んでいた表情は少し引き攣る。心配してくれてるのかな。

「うんそう、だから今日はパス。」

素直にそう認め、飲みの誘いを断ると「そっか…」と悲しそうな顔をするシャオロンだったが、すぐに「しっかり休みや！」と言ってくれた。ぐぅ優しい。

「ありがと。」

「ていうか俺んち来る？お前んちよりここから近いし、誰かに世話してもらっとった方がええやろ。」