三百七十三話 かぶき町四天王篇 ページ1
『おーとっせさん!遊びましょ‼……あれ?』
見廻り中手土産の酒片手に、スナックお登勢を覗き込んだ。
雪だるまつくろうと言ってもおかしくないような弾んだ声は届いてたはず。
だが返事が返ってこないだけじゃなく、店内に人がいない上に奥から誰かが出てくる気配もない。おっかしいな、休みとは聞いてないけど…。トラブルでもあったのかな。
源外さんとの会話でさらっとディスったからその詫びを含めて会いたかったんだけど。
今日の夜また出直そうと考えていると、背後から一人の男が話しかけてきた。
「オイ姉ちゃん、どうした」
『あ、いや。人いないの珍しいなーって思って』
店内へ向けていた視線を声の出ている方へ移す。
まだ昼間だがほんのり酒の臭い漂わせる男は、首をかしげて私を見る。
「姉ちゃん、この町の住人じゃあねェな。
お登勢一派が次郎長にやられたのは有名な話だぞ」
お登勢一派?次郎長親分?聞きなれない名前だな。
男の言う通りかぶき町に住んでいる訳ではないのでさっぱりだ。
そもそもお登勢さんが徒党を組んでいたのも初めて知ったな。
『次郎長って?』
「そんなことも知んねェのか。
いいか、次郎長ってのはここらを取り仕切ってる次郎長一家の親分のことだ。
なんでも攘夷戦争帰りでおかしな程強いとか、お登勢と因縁があるとか…。
ま、ヘタに関わらないに越したことはねェよ」
『ふーん』
お登勢さんとの因縁ねぇ、何はどうあれ私はおとなしく店が再開するのを待つだけだ。
生物じゃないし、この酒もまた会った時に渡そう。
諦めて踵を返そうとしたその時、小さな呟きが耳に入ってきた。
「お登勢も重症で目覚めてないって噂だしな…」
重症?しかも目覚めてない?
とっさに足の向きを戻し、男につめよる。
『その話詳しく教えて!』
「え、お…おう」
「やられた」は喧嘩だと思い、生死が関わるなんて考えもしなかった。
だけど、ギリギリな状態でもおかしくないような言い方がどうにも聞き捨てならない。
その上相手は男によると攘夷戦争帰りの手練れのよう。
いやな想像ばかりが頭をよぎる。
『入院先は⁉容態と、あと万事屋はどうなってる‼』
「待て待て、俺も噂でしか聞いたことないからそんな詳しく知らねーって。
でも病院なら近くに大きいのがあるからそこだと思うぜ」
『ありがとう!行ってくる‼』
「あっ、ちょっと待て‼」
興奮冷めやらぬまま、走って例の病院へ向かって行った。
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たこわさび - Aさん» 落ちの話ですが今の時点では決まっておりません。そもそも落とすかどうかも決めかねている状態です。まだ未確定の部分もあるのでご期待に添えるかどうかも分かりません。ですが、一つの意見としてしっかり受け取らせていただきます。コメントありがとうございました。 (6月22日 22時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
A - 沖田落ちだと嬉しいです! (6月22日 12時) (レス) @page37 id: f296b2ed74 (このIDを非表示/違反報告)
A - 落ちは決まってますか? (6月22日 12時) (レス) @page37 id: f296b2ed74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たこわさび | 作成日時:2023年5月11日 23時