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二百六十八話 ページ42

「先生は、どこにも居場所がなかった俺を拾ってくれたんだ。
家庭では親に見向きもされず、寺子屋では孤立していた俺を。

あの人は俺の恩人なんだ」



当人には悪いが少し分析しながら話を聞かせてもらう。
なるほど、鬼兵隊でも真選組隊士でもない黒髪くんが伊東くんを慕う理由はここにあったか。

昔酔った勢いでぽろっと伊東くんが幼少期の事を溢してたけど、もしかして関係あったり…。



「俺は、そんな先生が亡くなった事実をどうしても受け止められないんだ。
毎日毎日、寝ようと目を閉じる度に先生の顔が瞼に浮かび上がってくる。

その笑みが頭に、脳裏に焼きついて離れない。


なのにその笑顔が欲しくなり手を伸ばしても、先生が現れることはないのがどうしようもなく辛い」


『……』



寝ようとすると顔が浮かび上がって寝ようにも寝れない。
もう会えない事実による絶望感。まるで人生のどん底を味わったような気分になる。

伊東くんのことを“先生”と呼んでいるのが余計に解像度を高めてくるな。



「俺は助けられてからずっと先生の命令に従って生きてた。
今さら先生のいない世界で生きていけない。

もう俺はそこから、前を向ける気がしない」



前を向く、ね。曖昧な表現だ。

故人のことをすっぱり忘れて後の人生を楽しむのが前を向くということなのか。
それとも完全に吹っ切れて「私は元気にやっています」と報告できるのが前を向くなのか。



『いいんじゃない?前向かなくても』



気づけばこう口走っていた。
黒髪くんが顔を上げてようやく目が合う。目は大きく見開かれていた。

分かりやすく驚いてる黒髪くんに思わず目を細めるが、気にせずに話続ける。



『だって死んだ人のことを忘れるなんてできないし、その人の死が一生ものの傷になることもある。

なら後ろを向いたままで、思い出をずっと見ているままでもいいと思うんだ。
大切なのはその後一歩でも、少しでも進むことだと思うから』



持論だし、偉そうに言える立場ではない。
だけど、どうしても手を指し伸ばさずにはいられない。



『(まるでどっかの誰かさんを見てるみたい)』



私が話し終わった後少し間があってから、黒髪くんが後ずさって睨み付けてきた。
警戒された?上から目線過ぎた?不安の中焦っているような話し方でこう聞こえた。



「う、ぁ…おっ、お前らが先生を殺した癖に‼」

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作品ジャンル:アニメ
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たこわさび - めぐぽん(*´・∀・)さん» こんにちは、一気見していただきありがとうございます。本作品は恋愛要素がゼロに等しいですがそこまで読める何かがあったと思うと嬉しいです。新ジャンル開拓のお手伝いになれればと思います。 (2023年3月2日 23時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんにちは^_^一気見させて頂いてます。正直、恋愛ものが好きだったのでここまで読めると思いませんでした。楽しいです。 (2023年3月2日 18時) (レス) id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
たこわさび - ふじゆずさん» 銀魂を読み返してくれるきっかけになったのなら嬉しいです!こちらこそありがとうございます‼無理しない範囲で更新続けていきますね! (2022年11月5日 22時) (レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
ふじゆず(プロフ) - すっごい面白いです!!(語彙力)この作品見て久々に銀魂読もうと思いました!!ありがとうございます!!(?)無理しないでください!!ありがとうございました!!(?) (2022年11月5日 21時) (レス) id: af6d5fb7bc (このIDを非表示/違反報告)
たこわさび - さちさん» コメントありがとうございます!更新を楽しみにしていただけて光栄です。これからもがんばります。 (2022年11月4日 22時) (レス) @page10 id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たこわさび | 作成日時:2022年10月25日 18時

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