四百七十九話 ページ10
まずは坂田金時の情報を詳しく集めようかな。
名前も広まっていそうなので数は聞けるだろう。
記憶が残っている人は残念ながらいなさそうだがそれで進むこともありそうだし。
銀時「…真面目ちゃん、それなんだ?」
詩織「え?」
うっすらとした目標が見え始めた頃旦那が私の胸元付近を指さして問う。
ネックレスなんてしていない上にスカーフもしっかり付けているはずだ。
心当たりがなく旦那の視線につられて自分の胸に手を当てると、確かにスカーフの布の感触以外に何かがある。
手にとって視線を動かすとスカーフとベストの隙間に滑り込ませるように紙があった。
銀時「お前のか?」
詩織「いえ、見覚えはありません。
なんだか…新聞に挟まっているチラシみたいな材質ですね」
銀時「チラ裏?」
もしかすると坂田金時からの果たし状かもしれない。
この状況だと完全に乗っとるために旦那を消そうとしてもなんの違和感もないので、緊張しつつも折り畳まれた手のひらサイズの紙を開く。
すると目に入ってきたのはボールペンで書かれた走り書きのような字体の簡潔な一文だった。
〈たまさんと定春を探せ〉
漢字の細かい隙間が潰れていたり、平仮名ののパーツバランスがおかしかったりでお世辞にもキレイとは言えない字。
リアル脱出ゲームでもやっているみたいな挑戦的な物言いにどこか引っ掛かる。
一体誰がどこでいつ私にこれを渡したのだろうか、もしかしてどこかに私達を覚えている人が?
疑問は尽きないが確かに、万事屋の中にもスナックお登勢にも定春君とたまさんはいなかった。
詩織「これ…」
銀時「…………」
いたずらにしてもフェイクにしても破り捨てるには気になることが多すぎる。
もし定春君とたまさんを見つけて何か分かるなら、希望が見えてくるなら。
さっきまでの数打ちゃ当たる戦法に比べたらずっと望みは高く思えた。
詩織「私、ここに書いてある通り探してみます」
銀時「だな、まずはやっぱ源外のじいさんのとこか?」
詩織「あ、あの!」
早速それを聞いて行き先を決めようとする旦那にストップをかける。
多大な精神的ダメージを受けた上眉間にシワを寄せて難しい顔をしている人に、体力も頭も使う案件を背負わせるのは気が乗らない。
詩織「これは私に任せてください!」
真選組の一隊士として、真選組副長補佐として胸を張って告げた。
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作者名:たこわさび | 作成日時:2023年10月9日 22時