四百七十七話 ページ8
『いった〜』
新八「ちょっ…何やってんだアンタ!」
神楽「二人とも大丈夫アルか⁉」
二回目の後頭部殴りにAさんが、そして坂田金時が頭をさする。
するとそれを見て新八君と神楽ちゃんが二人にかけよった。これはマズい。
今の状況で万事屋の二人に敵意を向けられるなんて旦那には酷だ。
詩織「あの、すみませ…」
言い訳もロクに纏まっていないがとにかく旦那を庇おうと謝罪が口をついて出た。
しかし残酷なことに、私の声に被せるように新八君が旦那に向かって言い放つ。
新八「…折角金さんとAさんが見ずしらずのアンタ達のために協力してあげてるのにこんな事するなんて!アンタ……アンタ最低だよ‼」
新八君のその言葉で旦那の瞳に動揺の色が色濃く映る。それもそうだ。
「もしもドッキリだったら」という考えを捨てきれていなかったわけだが、ドッキリといえど本気のトーンで“最低”だなんてやりすぎの域に入る。
毎回悪ふざけが過ぎるAさんでも旦那に対するリスペクトのようなものは存在していた。
そう軽はずみにこんな言葉を吐くわけがない。…けど、だとしたら。
銀時「ぱ…ぱっつぁん?
みっ、見ず知らずなんかじゃねーだろ‼
本当に…本当にお前俺のこと…」
新八「誰がぱっつぁんだよ、気安く呼ぶんじゃねーよ!アンタら一体誰なんだよ‼」
銀時「ウ…ウソだろ、なァ神楽。
シラこいてるだけなんだろ、ドッキリかなんかにハメてるだけで…」
神楽「…出ていけヨ、二度とこの街に近づくな。
今度金ちゃんとAの前に現れたら許さないアル」
この現状を受け止めなければならないことになる。
他人どころか「大事な金さんと頼れる仕事仲間のAさんの敵」として認識されてしまったようだ。…想像の何倍以上も胸に何かが突き刺さる痛みが強い。
詩織「……Aさん!」
藁の糸に縋るようにAさんに向かって左腕を出す。
しかしAさんはそれに応えることなく、そっと微かな力で私の胸を押し返した。
『…ゴメン、本当に』
万事屋でお菓子を食べながらみんなで笑いあったことも、神楽ちゃんと一緒に駄菓子屋を回ったことも、Aさんにデートだと言われて連れられたことも全部黒く塗りつぶされたような感覚。
何も言えない、声が出ない。ただ去っていく四人の背中を見ることしかできない。
呆然と立ち尽くす。だがこのままではダメだと横に頭を振った。
違うでしょ!今一番辛いのは旦那なんだから‼
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作者名:たこわさび | 作成日時:2023年10月9日 22時