五百二話 ページ33
詩織「……どうですか、なおりそうですか?」
不安げな声音で物陰から顔を出し気を失っているたまさんに目線を移す。
すると私の問いかけに反応して背中を向けたまま源外さんが口を開いた。
源外「こいつは俺に任せとけ。
例え自分で作った機械に洗脳されたとしても生みの親は俺だ」
皮肉混じりだが安心感溢れる返答に一先ずはため息を吐く。
しかし私と旦那の状況はままならないままでいた。
事情を説明してなんとか源外さんに匿ってもらうことには成功したが状況が悪すぎる。
たまさんが襲撃されたと思ったら、いつの間にかその原因と言われ指名手配されているんだから。
力が抜けその場にしゃがみ込むと旦那が源外さんに問いかけた。
銀時「いいのか、かぶき町の敵をかくまって」
今更ながら的確当たり前すぎる質問。
比喩もなく正真正銘町人全員が敵で血眼になって探している状況下で、私と旦那を庇う行為に何の徳もない。
それどころか金時に敵認定されるのが目に見える。
けれど源外さんは気にする風でもなく言ってのけた。
源外「俺ァ人間の言葉や心が移ろいやすいのをしってる。
機械の魂は鉄よりも重てェってな、たまが信じたなら俺もてめーを信じるしかあるめーよ」
銀時「ケッ…クソジジイが。」
たまさんは私と旦那のために身命をとして戦ってくれた。
からくり技師ならではの視点だがそれが裏づけになっているのか。
坂田金時が訪れる前のいつも通りの源外さんの反応に実家のような安心感を覚える。
源外「どうするつもりだ、優秀にも俺の機械はかぶき町を完全に包囲しとるぞ。
しかも相手どるのはかつての仲間、お前にとっちゃ最強最悪の敵だろうよ。
お前に……万に一つも勝ち目はねェ」
辛くもそう言い切る源外さん。
けれど旦那はこの短い期間で何度も打ち砕かれてきた。
数えきれないぐらい痛い目にあって苦しい思いをしてきた。
たまさんに害が及んだ際に、ちんけな臆病さなんかは消えている。
銀時「理屈で言えば、な」
詩織「理屈で言えば、です」
旦那の言動をなぞるようにとっぱらった笑みで言い放った。
坂田金時の見立て通り町のみんなに傷はつけられない。
それは癪だが不利な状況でもハッピーエンドへ向かうのが主人公というもの。
この世界のヒーローが坂田金時ならば、対抗として私達のヒーローの坂田銀時が立ち上がる。
洗脳でなんかじゃない。信頼の元歩みを進めるヒロインの私と定春と共に。
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作者名:たこわさび | 作成日時:2023年10月9日 22時