【銀魂】ヒロインが可愛すぎる１１ (ページ30)

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四百九十九話ページ30

詩織「…だんな」

銀時「どうした」

行く宛もなく街を歩く旦那の背中にフラフラと着いて行く。

しかしその彼の背中が今にもいなくなってしまいそうなくらい不安定で、人混みの中の子供みたいに旦那の着物の袖をギュッと掴んだ。

旦那はグラつく瞳を動かして私へ視線を動かす。
そうして自虐的に力のない笑みを浮かべた。

銀時「俺が全部ほっぽり出してどっか行っちまう、なんて想像でもしたか？」

たま「妙な事考えてませんよね、銀時様」

旦那の穏やかじゃない言動にたまさんが眉を下げて不安そうに声をかける。
立ち止まった橋の上で彼が沈みかけた太陽へ目線を移した。

銀時「アイツ…人からかっぱらった立場にしちゃよくやってやがったな。
仲間思いで仕事もよくできて俺のいねェ間もアイツら護ってくれた。

アレが理想のリーダーってんなら、そいつを潰してまで俺の戻る意味はあるのか…そう思った」

詩織「！」

たま「銀時様……」

このまま口から紡がれる言葉をきいてしまうと一気に何かが崩れ落ちてしまうような、そんな気がして袖を掴む力を強める。

今の旦那を見ると坂田金時を殴っていたことなんか信じられなくなるくらい。
旦那の横顔から漂う切なさと、銀髪に反射した夕日の眩しさから目を細めた。

銀時「だから自分で決めたのさ。

この先も奴等が俺を思い出さなければ金時を慕う連中は皆俺の敵に回る、きっと俺達はもう元には戻れなくなるだろう。でも一つ約束してほしい。

そん時俺がどんな事になっても、たとえ倒れる事があっても、奴等には手を出さないでほしいんだ」

嫌な予感とは裏腹に旦那から出てきたのは私が知っている彼の不器用な優しさ。
私とたまさんの方を向くことはないけれど声音が旦那の決意や想いを表している。

自己犠牲の塊みたいな旦那の声に続けて耳を澄ました。

銀時「その代わり俺も約束するよ。

たとえ仲間に首を斬られようがたとえ帰る場所がなくなろうが、俺は金時からとり戻すよ。
どんなみすぼらしい現実でも、俺達がこの手でつくってきた真実を。

みくびるなよ。俺ァ置いてかねーよ、誰も」

死んだ魚の目なんかじゃない、まっすぐな瞳を動かし彼は私達に向かって軽く笑みを浮かべる。

そんな特別じゃない旦那の笑顔が、坂田金時の熱にあてられても変わらずに存在しているという事実だけでとてつもない安心感に襲われた。