四百七十二話 ページ3
詩織「はぁ〜」
大きなため息を吐いて肩を落とす。一体この世界はどうなってしまったんだろうか。
よく見れば看板も「万事屋銀ちゃん」から「万事屋金ちゃん」に変わっている。
混乱に繋がる要素として、万事屋が乗っ取られただけならまぁまだわかる。
まだ万事屋に憧れやコンプレックスを抱いてる者の犯行と判断がつくからだ。
けど何⁉なんでAさんもあそこに混ざってるの⁉
なんで神楽ちゃんと新八君と一緒に万事屋やってるの⁉
これからどうしよう、あの状態で放っておくことはできないけど今は情報が少なすぎるし…。
「「はぁ〜」」
もう一度重くため息を吐くと偶然隣の人とタイミングが被る。
恥ずかしさが覗きつつ会釈でもしようかと視線を横へ動かすと、視界に入ったのは探していた鈍い銀色だった。
詩織「旦那‼」
銀時「…え?」
驚いて声が出る私に信じられないものをみたかのように目を見開かせる旦那。
旦那がこの件についてどこまで知っているのか、どう動こうとしているのか。
聞きたいことは山程あるが感情が先行し相手に詰め寄った。
詩織「どこに行ってたんですか!というか何してたんですか‼
今万事屋が坂田金時っていう人物の乗っ取られて大変なことになっててですね」
旦那がこの惨事を知らない可能性を考慮して一から説明を試みる。
落ち着かないであっちこっちへと視線を踊らせていると、呆然とした顔で固まる旦那。
違和感を覚えて一旦様子を見ようと思いキュッと口を閉じた。変な行動はしていない、はず。
しばらく二人の合間に沈黙が続くと旦那がおもむろに口を開く。
憔悴という言葉が相応しいような疲れきった表情でこう言った。
銀時「俺が、わかるのか?」
詩織「……へ?」
この旦那の様子…。
あの金髪の男がもし本当に旦那に成り代わったのなら、神楽ちゃんたちは旦那のことも忘れている可能性が高い。
今までの思い出を全て塗り替えおまけに対象を記憶から消し去る。
この状況、万事屋の二人とAさんだけでなく街の人全員に忘れられていてもおかしくない。
何がトリガーとなってこうなったのか、坂田金時とは何者か。
それも重要だが瀕死の旦那を放置するわけにもいかないので元気の足しになればと声をかけた。
詩織「勿論ですよ!旦那の記憶は嫌ってほど頭に残ってます‼
幽霊にビビって襖突き破ったことだって覚えてますよ‼」
銀時「それは忘れてくれる?」
360人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:たこわさび | 作成日時:2023年10月9日 22時