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夏休みが始まり、世間は賑わいを見せていた。それと反比例するかのように私の心は沈んでいた。
はぁーとため息をつく。
「陰気くせぇな」
バイトの休憩で控え室で一人ため息をついていると、ドアの方から声がして振り返ってみると影浦先輩がお好み焼きが乗った皿を持って入ってきた。
「すみません… ありがとうございます」
私はそのお皿を受け取って、お好み焼きを食べ始めた。お好み焼きはいつも通り美味しいのに、喉が通らなくてお箸を置く。
「…なんかあったのかよ」
「え？ いや、影浦先輩に言うほどのことじゃないですよ」
私はニコッと笑った。
影浦先輩はチッと舌打ちをした。
「いいから、頼れ」
そう言って、私の前に椅子を持ってきて座った。
話してみろと言っているような態度に私はいつも通りみたいに笑ってしまった。
兄が居ればこんな感じなのかもしれない、そう思った。
「実は夕太が夏休みの間、夏期講習に通いたいって」
それは受験生である限り、当たり前の望みだ。私も通わせてあげたい。
「でも、うちにお金がなくて… 」
私はこのお好み焼きの他にコンビニでもバイトしているが、そのバイト代も今後の学費のために貯金をしたいし…
はぁーと無意識にため息が出る。
「それなら、ちょうどいい奴がいる」
影浦先輩はニヤッと笑った。
「おい！ 荒船！！」
私は影浦先輩について来いと言われついていくと、常連のボーダー隊員達がいた。
荒船と言われた男の人は「なんだ？」と影浦先輩の方を向いた。
「あ！ 月子ちゃんだ！ やっほー」
確か、犬飼と呼ばれていた先輩に声をかけられ、取り敢えず、「こんにちは」と返す。
影浦先輩は私の肩をぐいっと寄せて言った。
「こいつの弟の勉強見てやってくれ」
私と荒船と呼ばれた人は影浦先輩を見た。
「お前、大学推薦で決まるって言ってたろ？」
「そりゃ、言ったけど…」
彼は私の顔を少し困ったような顔で見た。
「月子、こいつは六頴館の三年で、教えるのも上手い」
「え、本当ですか？」
私は彼の顔をじっと見た。確かに賢そうな顔つきをしている。
「お願いします！ うちの弟の勉強みてもらえませんか！？」
私はばっと頭を下げた。彼は「顔を上げてくれ」と言った。
「わかった 弟の面倒みる」
「ありがとうございます！！」
私はもう一度、頭を下げた。
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作者名：つちのこ | 作成日時：2020年6月3日 0時
