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生駒side
金髪の髪が夜の闇の中でキラキラとしている。高校生のときはこげ茶色の地毛でそれはそれで好きだった。
可愛らしい見た目に反して毒々しい言葉を吐くそいつに俺は心を奪われていた。
もう今となっては笑い話の種にもなるような事だが、当時の俺は本気で思いを寄せていた。誰にも言わなかったし、悟らせなかった。こいつとの今の関係性を無くしたくはなかったからだ。
キャラじゃないことしてるとは何回も思った。ただ、セーラー服を着た凛が俺のことを呼ぶ事によって、どうでもよくなった。考えるのは得意ではなかったし、こいつのそばで居れればいいかそんな風に考えていた。
隊を脱隊したい、そう言われた時のことを未だに覚えている。隠岐が刺された時、医者からは命に別状はないと言われたが、怖かった。俺が代わりになれたらと、何回も思った。そんな風に思っているとまた医者に呼ばれた。次はなに?と思っていると、雨に打たれて風邪をこじらせて肺炎を発症させた凛が呼ばれた先にいた。
凛は意識はあるようでずっとごめんと繰り返し言っていた。
俺はただ側にいることしか出来なかった。
今はもう高校生の思い出としてそっと胸の中にしまっておいて、たまにアルバムを見返した時のようにその事に浸る。思いを伝えたいなどとは今でも思ったことはない。
「なぁ、生駒」
凛の金髪の髪の間からビー玉みたいにキラキラした茶色の瞳が覗いている。
「うん? なんや?」
俺がそう言うと、やっぱなんもないと首を横に振った。
「もう、戻ろか」
凛がすくっと立って言った。
「新しく入った子、ええ子そうやん」
暗くてあまりわかりづらいが、多分、にやっと笑っているに違いない。
「おん、むちゃくちゃええ子やで」
末っ子気質の新人は凛が脱隊してちょっと経った頃に入った。俺たち関西圏の奴らの中でもやっていける根性と相手合わせていける感性があったのだろう、すぐに隊にとけこんだ。
「あ! それとな! 太刀川さんにチューされてんけど、どー思う!!?」
凛は先を歩きながら、大声で聞いてきた。
は? チュー? チューって、え?
俺は頭がこんがりながら、凛の方に歩いて行った。
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つちのこ(プロフ) - ありがとうございます!忘れてしまってました… (2020年5月23日 23時) (レス) id: 2241c11c95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つちのこ | 作成日時:2020年5月23日 22時