検索窓
今日:2 hit、昨日:10 hit、合計:115,217 hit

知る者無 ページ21

sideNO

刀剣達が嘆く一時間程前
灯りを付けず、とある部屋に一人の少年が座っていた

机に向き、何かを紙に綴っている
その瞳からは今にも涙が溢れそうで、唇はそれを
しまいときつく結ばれていた

やがて筆を置いた少年は傍らにあった小さなナイフを、その小さな手に持つ

『..結局...僕を、見てくれる人..いなかったなぁ...』

そう呟いた少年は
ナイフの鋒を手首にあてがった

『なんで、だろう..』

そんな言葉に答えてくれる声はいない
もし、この時...誰かが答えていたのなら..
少年はきっと...否、絶対..この手を止めただろう

けれども、答える声がいないこの時
少年を止める術は何処にもなかった


『や..っぱり..僕なんて、産まれなきゃよかったんだ.....そしたら..』


そしたら、みんなが幸せになれる




少年の口はそう言葉を紡いでいた
..少年の目から見て、ここ数ヶ月の刀剣達は己が
いた時よりも幸せに見えたのだろうか?

『僕がいるから...みんな、喧嘩、しちゃうんだ..僕がいなければ、みんな、また..仲良しに戻って、くれるよね..』

否、こんな幼い瞳から見ても
今の彼等は幸せに見えなかったのだ

少年は、優しすぎた
己の存在を消す事で、彼等に再び笑顔を与えようとしていたのだ

そうする事でまた彼等に笑顔が戻ると信じていた
信じて疑わなかった

少年が消える事で
彼等が幸せになるなど有り得ないというのに..







『...ごめんなさい..』







少年は小さく謝罪を述べると、ぎゅっと目を瞑り
手首に強く当てたナイフを引いた









鋭い刃が皮を裂き、肉を抉り..少年の手首からは
血が溢れ出す


ナイフを手放した少年はその場に蹲った

血が溢れ続ける少年はどんどん顔色が悪くなる
呼吸が浅くなり、身体が寒さで震える



そんな少年の瞳からは暖かい涙が溢れていた









─その涙は決して痛みに対する涙ではない─









「A!!」









暗い部屋に蹲り冷たくなった少年を
刀剣の一人が見つけるのは

それから...一時間程後である

判らない→←..遅かった



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (203 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
586人がお気に入り
設定タグ:刀剣乱舞 , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

机の上にも三年 - この作品とっても良かったです 話を途切れさせるのが嫌で夜一気読みしてしまいました(笑)更新頑張ってください (9月15日 22時) (レス) @page36 id: 1ca09d8d18 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すごい好きです (2023年1月10日 13時) (レス) @page36 id: 35d9ffe491 (このIDを非表示/違反報告)
やまは(プロフ) - すごく面白くて一気に読んでしまいました!あぁ〜、ここで更新停止かぁ…!とも思ってしまいました笑いつかこの作品の続きが読めることを楽しみにしております (2022年3月16日 23時) (レス) @page35 id: d3221d33a6 (このIDを非表示/違反報告)
星邪(プロフ) - お話にのめり込んで一気に読んじゃいました!主人公と自分重ねて読んじゃうところがあって、凄く頑張って!って気持ちになりました!言葉で表せないくらい凄い作品でした!更新まっていますね! (2020年7月28日 19時) (レス) id: c3541498d1 (このIDを非表示/違反報告)
名無しの出来損ない - 長文失礼します。一気に読ませていただきました。最初から、この主人公は自分と同じだと、勝手に重ねて読みました。何度も何度も涙が出て、こんなにもいい小説に出会えて本当に嬉しいです。素晴らしい作品を作っていただき、ありがとうございます。 (2020年1月12日 21時) (レス) id: feab841105 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:風船ガム | 作成日時:2018年11月23日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。