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私達は公演を始める前、あらかじめ、宣伝をお願いしていたが、

きっとそれどころではなくて、伝わっている人も少ないだろう。

だからもう一度私達で宣伝をすることにした。



今日、こういうことをすると伝えていくと、みんな笑顔になっていく。

この笑顔がなによりの報酬だ。



だが、1人は違った。少年だった。

その子は言った。



「こんな大変な中、俺はそんなものを見ている場合じゃない。家族を守らないといけないんだ。

働かなくちゃいけないんだ。」と。



その言葉はとても私に刺さった。


国境をまたいでしまえば、こんな小さな子供でさえこんな考えに至る。



だが、その悲しいという同情の気持ちを顔に出していけない。


ニッと笑って、その子の手品をする。


その子の目は丸く大きく開かれ、目に少しの光が入る。


「私は、君たちがいる世界とはまた違った世界に連れて行くお仕事をしているんだよ。


私達の世界に入っていれば、みんな笑顔になる。つらさも悲しさも全て忘れて笑顔に、ね。」



疑いの目を向けられているがきっと少しは興味を持ってもらえただろう。




手を降ってその場をあとにする。




慌ただしく準備は終わり、公演が始まる。



ステージの真ん中に立ち、観客席を見渡す。




いたのだ。あの少年が。一番うしろの席ではあったが、弟とお母さんらしき人を連れてきていた。



とても嬉しかった。

ちょっとした手品だったが、あの子にとってはとても感動的なものだったのだろう。




ここで冒頭に戻る。


観客を見送って、舞台裏に戻る。


一息ついて少し座ろうと思ったが、あの少年がどうも気になり、外へ出てみる。



するとキョロキョロしている少年の姿があった。


声をかけてみると、笑顔になる少年。



「どうだった?私達の世界は」


「とても、とても、楽しかった!あんなこと言ってごめんなさい…。」


シュンと顔をうつむかせ謝る少年の頭をそっと撫でる。



「いいんだよ。笑顔になってくれたならそれで全部いいんだ」


「あのね、僕、将来はお兄さんみたいな人になる!

たくさんの人を笑顔にして、幸せにする!」



目をキラキラ輝かせて笑う少年はとても眩しかった。






「なんてこともあったよなぁ。」

「もう、何年も前のこと掘り返さないでくださいよ!」

「いいじゃないか、いい思い出なんだから」




あれから少年は成長し、うちの劇団に弟子入りした。


私ももう引退しなければならない歳だから、この子に引き継いでもらおうかな。



なんて思ってることは内緒

折れた翼→←世界に引き込まれる



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姫愛羅(プロフ) - くらうんさん» えっくらうん!?まじで!?コメントありがとう嬉しいよ(T_T)まじか!運命かなにかじゃんwそう言ってもらえると本当に嬉しい!ありがとう!!これからも頑張るね! (11月6日 8時) (レス) id: bb7f950f3c (このIDを非表示/違反報告)
くらうん - てぃあらちゃん…!!これ前見てたしなんならお気に入りだったやつ…!!まさかとは思ってたけど本当だったのか…!応援してます…!!頑張ってください!! (11月5日 17時) (レス) id: cb2f978ff8 (このIDを非表示/違反報告)
姫愛羅(プロフ) - だっふぃーさん» わぁぁぁ!お祝いのコメントありがとうございます!!そう言って下さるの本っ当に嬉しいです!!色んなジャンルに手を出すことは自分にとっての挑戦で不安がたくさんですが、そう言って頂けて少し自信がつくことが出来ました!これからもどうぞよろしくお願いします! (7月22日 23時) (レス) id: 40f9f6be6d (このIDを非表示/違反報告)
姫愛羅(プロフ) - 風呂敷ёさん» わぁぁぁ!!わざわざお祝いのコメントありがとうございます!!英語が本当に苦手で翻訳させて頂いたんですが、見た瞬間に幸せの気持ちでいっぱいになりました…本当にありがとうございます( ᴗ_ᴗ̩ )♡ (7月22日 23時) (レス) id: 40f9f6be6d (このIDを非表示/違反報告)
だっふぃー(プロフ) - 姫愛羅さん、誕生日おめでとうございます!「空」という作品、暖かくほっこりするのと同時に少し切ないような読後感でとても好きです…!怖いものからファンタジーものなどたくさんのジャンルを書かれる作者様の作品が大好きです。これからも応援しています‼︎ (7月22日 22時) (レス) id: cd3561a74c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:姫愛羅 | 作成日時:2022年8月30日 21時

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