[オリジナル]別れの時まで[恋愛] (ページ7)

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第6話ページ7

二月十四日。バレンタイン。

世間がピンク色に染まる日。

また、たくさんの人々が涙を流す日でもある。

Aのクラスも例外ではなく、友チョコ、義理チョコ、本命…

沢山のチョコの取引を、放課後ぼんやりと眺めていた。

「あいつにチョコわたさなくていいの？今年で終わりかもしれないのに」

田儀(たぎ)がほっぺたをつついてきた。
高校からの付き合いだが、結構気が合うし、仲がいい。

「……甘いのは苦手だから」

「さっすが、幼馴染！もはや嫁だね」

「しょうもないこと言わないで田儀」

「とか言いつつ～～～～～？？」

にやけ顔をして、ひじでつついてくる。

「しつこい。てゆうか、田儀は彼氏にあげないの？」

すると、スイッチが切れたように動かなくなった。

「え、田儀？」

「忘れてたあああああああっ！」

かと思えば、地面が震える程の大声でそう叫び、鞄を引っ掛けて教室を飛び出していった。

大方、彼氏との約束を忘れていたのだろう。

「ほんと、天然だなあ」

”今年で終わりかもしれないのに”

「そっかあ…」

今年で終わりなら。

「行くか」

勇気を振り絞って、何かあげてもいいかも。

自販機のコーヒーを買い、悠を探す。
そんなのでいいのか迷ったけど、プレゼントなんて買ってない。

そもそも何かを渡すのなんて、照れくさくてやったことが無い。

その事を話すと、田儀には『幼なじみ失格!!!』と言われた。

しかし、教室にも、屋上にも、中庭にもいない。

「どこにいるのよ…」

コーヒー冷めちゃうじゃん

学校中を探して、あのときの階段でやっと見つけた。

「悠、」

声をかけようとして、他の人影が見えた。

さっと身を隠し、そちらを伺う。

あの子…どこかで見たことがある気がする

「わたし、空井くんのことが好き、なの。付き合ってくださいっ」

間違いない。ここに私を呼び出した子だ。

手には小さな箱が握られている。

高そうなラッピングを施されているが、チョコではなさそうだ。

あのときの強気な態度とは違う。

顔も耳も真っ赤に染まっていて、声も震えていた。

ああ。

こういう子だ、ツンデレっていうのは。

容姿も整っていて、なんだかんだいって優しい子の筈だ。

負けている。可愛さとか、性格とか、プレゼントとか、つまり何もかもが。

「ごめん。それはできない」

「えっ」

二人、いや三人の空気が張り詰めた。