決闘 ページ4
「先生、今戻りました！ なんだか、外がひどく荒れているようですが……先生、どこに行ってらっしゃったんですか？」とある男が言った。
サイタマは円卓に突っ伏し、打ちひしがれていた(ねずみのような絵柄の入ったティーシャツに着替えていた)。
「スーパーが無ぇ」サイタマが言った。
「……第一声がそれですか？ それに、スーパー？ 何のことですか？」とある男がサイタマに問う。
「え、だってジェノス、俺のスーパーが――」
「ああ、スーパーなら看板が折れていただけですよ。さっき先生を探しに見に行きました」サイタマにジェノスと呼ばれた男が言った。
「本当か！」サイタマが目を輝かせて言った。「よかった、豆腐が切れてたからどうしようかと思ったよ」
サイタマはジェノスに『先生』と呼ばれているが、弟子にした覚えはことさら無かった(家賃はジェノスが負担している)。しかし、ジェノスの前で怪物をワンパンで倒してしまってからか、ジェノスはサイタマにまとわりつくようになった。サイタマは初めうんざりしていたようだが、今となってはそうでもないようだ(顔と口に出さないだけかもしれないが)。
「先生」ジェノスが言った。「先生はもうＢ級７位ヒーローで、俺はＳ級１４位です。もうそろそろ、一回だけでも手合わせ願えませんか？」
サイタマは面倒くさいといった表情でジェノスのほうを向いた。
「お前さ、なんでも手合わせすりゃ済むってもんじゃねーんだぞ。プロのヒーローたるものはいつどんな状況でも戦えるようにしねーと。疲れたらどうするんだ？」
サイタマがもっともなことを言うと、ジェノスが言った。
「そうですが、もし敵がきたらそれはそれでいいのではないでしょうか。いつどんな状況でも戦えるようにする、つまり、疲れていても戦えるようにするってことですよね？ だとすれば、俺としては久々に手合わせを願いたいものです。先生、俺は強くなったんです。しかし、最近このごろ、この力を試したのは音速のソニック(笑)だけです。先生、今日やったら半年は手合わせしないで修行に励みます。もちろん、先生に勝つなんて思っていませんが、自分が今どのくらいの強さなのか、確かめたいんです。先生なら、すべてを受け止めてくれそうで……。いいですか？」
そんなジェノスの話を聞いて、サイタマは簡潔に答えた。
「ああ、いいぜ！(半分聞いてなかったけど俺の意見頭ごなしに否定されたのはわかったからこれで文句ないかな？)」
続く
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作者名：赤林タケジ | 作成日時：2015年10月2日 17時
