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遮光カーテンの向こうで聞こえていた音も、
今ではすっかり聞こえない。
目隠しをずらして時計を見ると、
あれからもう、2時間以上たっている。
タイムリミットまで、あと30分だ。
「もう諦めちゃったのかなー…」
伊野尾くんがつまらなさそうに、
口をとがらせて呟いた。
所詮、目立ちもしない、普通の男子高校生。
それに、爆弾に当たろうと、隕石が落ちようと、
どっちにせよ死ぬのだから関係ないのだろう。
「じゃあ、もう終わりにしようよ」
「…雄也?」
気が付けばふと、そんなことを口にしていた。
皆は驚いたのか、静かな空気が流れる。
俺は目隠しや手足に巻き付けられた縄を外すと、
他に縛られている光くん、有岡くんの分も外した。
「…もう、どうせ死ぬんだし。
こんな時間、勿体ないよ」
少しの沈黙の後、
伊野尾くんがパソコンをシャットダウンさせる。
後に続くようにして、
光くんも有岡くんも、持っていた縄を捨てる。
「フィナーレだ」
「…何それ、薮。だっさ」
「…なんだよ、いいじゃねーかかっこつけたって」
薮くんが照れ笑いしながら、光くんとドアノブを捻る。
廊下はもう真っ暗で、蛍光灯の明かりもない。
「行くよ、皆」
光くんは一足先に廊下に出て、
手招きをした。
「夜の学校ってさ、なんか新鮮だね」
「いや、夜じゃねぇし、真昼間だから」
「あー、そっか」
有岡くんが言うように、確かに外も中も、
夜のように真っ暗だ。
そんな暗闇に、
一筋の光がさした。
それは太陽の光でも、蛍光灯の明かりでもなく、
懐中電灯のきつい明りだった。
「おい、犯人、待て!」
懐中電灯を持っていたのは、学年主任の教師。
俺らが真っ黒の格好をしていたから、
犯人だと勘違いしたらしい。
「やっべ、走るぞ」
俺らはその光くんの合図とともに、
一斉に走り出した。
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