43 ハル ページ43
桜はまだ満開とは言いがたく、ところどころ薄紅色の蕾をつけたまま、俺たちを送り出していた。クソチャイナと「卒業しちゃったー」なんてベソをかいているAを呼び止め、話があることを伝える。
結局卒業までに言いだすことができなかった俺は、別々の道へ進むことがもう決まっている状況で言い逃げをする気なのだろう。
『もう沖田ともなかなか会えなくなるね』
『次会うのは同窓会とか? ……ああ、成人式があるか!』
『好きだ』
「振袖何色を着ようかなあ」なんてバカみたいなことを話していたAは、俺の言葉に目と口を丸くする。しかしそれも次第に歪め、申し訳なさそうな顔をしては「ごめん」と呟いた。
答えは分かっていたつもり……なんて言ったら、言い訳に聞こえてしまうだろうか。それなのに伝えちまった俺はやっぱりバカなのかもしれない。
『……なら、早く行けよ』
『お前には行かなきゃいけねェところがあるから』
ほら、こうして背中を押してしまう辺り、とことん阿呆である。俺に大きく頷いてくれたAの背中を「またな」と精一杯笑って見送った。
彼女の姿が見えなくなった後、俺は近くの桜の木を睨みつける。
『盗み聞きたァ、悪趣味ですねィ』
『……そんで、生徒に手を出すのも悪趣味だ』
負け惜しみのように聞こえてしまう俺の小さな声を、高杉は笑わずに黙って聞いていた。まだ笑ってくれたら俺はコイツを本当に嫌いになれたのに、どこまでも嫌な奴。
『あんたが将来、また生徒に手を出してんなら……俺が逮捕してやりやすぜ?』
『……んなことしねェよ』
ふんと簡単に鼻で俺をあしらい、自分の寄りかかっている桜を見上げる。ヒラヒラと落ちてくる花びらを目で追っては、地面に落ちる前に目を伏せてしまう。
『……なら、早く行ったらどうですかィ』
せっかくこの俺が押したくもない背中を押してやったんだ。無下にするようなことをしたら恨んでやる。
高杉はAと同じ方を歩き、また俺はその背中を見送っていた。
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紫蘭(プロフ) - ハルさん» そうなんですか。でも応援して頂けるだけでも嬉しいです笑 私も、同い年だと分かって嬉しいです!親近感が湧いて仕方ないです笑 またお話出来るの楽しみにしてます! (2017年9月18日 15時) (レス) id: 684ce788b1 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 紫蘭さん» 実はですね、私中学受験をしたので高校受験がないんですよ……。なので本当に他人事のようにしか紫蘭さんに何も言えないのですが、本当に応援しております。同い年、嬉しいです。親近感が湧いちゃいます( ´ ∀`) 息抜き程度にでもまたお話ししてくださると嬉しいです。 (2017年9月18日 14時) (レス) id: eb197fc214 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 獅子の子さん» やっぱり高杉はいいですよね〜( ´ ∀`) ニヤニヤしちゃいますよね、考えてると。 この作品でキュンキュンしてくださったのならなによりです! 閲覧とコメント、どうもありがとうございました! 高杉さん万歳!!\(^-^)/ (2017年9月18日 14時) (レス) id: eb197fc214 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - ハルさん» ハルさんも高校受験何ですか!!私も一緒です笑 いえいえ、全然大人じゃないですよ…中学3年のまだまだ未熟者です。私自信、ハルさんの方が大人っぽいです!ハルさんも身体に気を付けて勉強や更新の方頑張って下さい!応援してます!! (2017年9月18日 12時) (レス) id: 684ce788b1 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 銀皐月さん» 先生に、ですか!! それは素敵な夢をお持ちですね!! 「なれる」なんて無責任なことは言えませんがなれるように祈ってます。きっと良い先生になるんだろうなぁ、なんて思いつつ... その時は素敵な生徒にも会えると良いですね! コメント有難うございました (2017年9月18日 9時) (レス) id: 30e1da4c35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:高杉同盟 x他1人 | 作成日時:2017年7月31日 23時