【銀魂】ボールパークの恋愛算術

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『なんなんですか、さっきからバカとかアホとか！』



そう言って怒る私を、彼は軽く笑う。きっと猿が「ムキー！」と鳴いているだけだろうと思っているのだ。

勝手な妄想かもしれないが、この先生はそのくらい私をバカにしている。




『別に間違っちゃいねェだろ』




そう言われて仕舞えば何も反論はできず、私は押し黙った。一旦机に置いたシャーペンを握りしめ、再び問題に向かい合うもペンが進まない。

力無くそこに顔を伏せ、「うう……」と唸り声を漏らす。




『早く解け。帰れねーぞ』

『……嫌いなんですもん』




脈絡の無い私の返しに、彼は「あ？」と聞き返す。顔を上げて恨めしそうに先生を見れば、彼は少々怖い顔をしていた。




『数学なんて、大っ嫌いなんですもん！！』




いちいち公式だ、なんだ、これはあれだ、こうだ……って覚えてられるか。何がＱ.Ｅ.D.だ。こちとら何も完了していない。




『だから私に数学の勉強をさせたいなら、数学を好きにさせてください』




そうして私は高杉先生を嫌いな数学に重ねて、キッと睨みつけた。そこには絶対好きになってやるものか、という強気の意味も込める。


しかし彼はそんな私に、滑稽そうに喉の奥で押し殺すような笑い声を聞かせた。




『なら、俺を好きになれば数学だって好きになるだろ』


『……はい？』



素っ頓狂なことを言い出した高杉先生は、やけに本気だと言うように真っ直ぐ私を見つめてくる。確かに好きな先生の科目はやる気が出るかもしれない。


だが、数学の教師はこの男、高杉晋助だ。




『絶対、先生も数学も好きになんてなりませんから！！』



シャーペンの先を彼に向けて、私は宣戦布告をする。先生は挑発的な目を見せては、再びくくくと喉を鳴らした。

そうして私にとっては苦痛以外の何物でもない、放課後の補習が始まったのである。

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