22 ハル ページ22
『はい、どうぞー』
そう言って私の前に見せられたのは、高杉先生だ。彼は少々……いや、相当不機嫌そうに坂田先生を睨みつけている。
『なにがどうぞ、だ』
ふん、と鼻を鳴らす高杉先生に、坂田先生は「この雨だし、ひとりで帰すのは心配だろ」と説得して私を高杉先生の傍へ突き出す。
「よろしく」と満面の笑みを浮かべる彼に、仕方ないと言いたげな息を吐いた高杉先生。私はどうしたら良いのか分からなくて、ただ高杉先生を見ていれば、その翡翠の隻眼と目が合う。
『……付いて来い』
そう言われて先生の一歩後ろを歩き、教員用の駐車場まで連れてこられた。そこに停めてある一台の黒塗りの車。高級そうなそれに、彼は乗り込む。
呆然と見ていた私だが、先生が扉を閉める直前に「早く乗れ」と顎で示す。
私はせかせかと後部座席に乗り、シートベルトを締めた。すん、と鼻をすすれば煙草と香水の匂いが入り混じっており、まるで高杉先生に包まれているみたいに思えてしまう。
そうして発進するも、何を話すでもなく車は走り続けた。道行く街頭に照らされている高杉先生を盗み見ていれば、「なんだよ」とルームミラー越しに聞いてくる。
しかし私は何も言えず、黙って首を横に振った。
黙り込む私たちの間には、雨が五月蝿く窓を叩きつける音だけが響いていく。だがそこには、私の心臓の鼓動も煩わしく混ざっているではないか。
でもどこか落ち着くこの空間に、永遠を求めてしまう。窓から自分の近所のスーパーが見えれば、自然と肩が落ちた。
そんな私になんて気付かずに、彼はアクセルを踏んでいる。途中にある信号が全て赤になってくれれば、この時間が長くなるのに、神様は意地悪だ。
私の気も知らないで緑色のランプを付け、彼は一度もハンドブレーキを触らずに済んでいる。
「コンビニに寄りたいです」……なんて言ったら、彼は怒るだろうか。
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紫蘭(プロフ) - ハルさん» そうなんですか。でも応援して頂けるだけでも嬉しいです笑 私も、同い年だと分かって嬉しいです!親近感が湧いて仕方ないです笑 またお話出来るの楽しみにしてます! (2017年9月18日 15時) (レス) id: 684ce788b1 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 紫蘭さん» 実はですね、私中学受験をしたので高校受験がないんですよ……。なので本当に他人事のようにしか紫蘭さんに何も言えないのですが、本当に応援しております。同い年、嬉しいです。親近感が湧いちゃいます( ´ ∀`) 息抜き程度にでもまたお話ししてくださると嬉しいです。 (2017年9月18日 14時) (レス) id: eb197fc214 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 獅子の子さん» やっぱり高杉はいいですよね〜( ´ ∀`) ニヤニヤしちゃいますよね、考えてると。 この作品でキュンキュンしてくださったのならなによりです! 閲覧とコメント、どうもありがとうございました! 高杉さん万歳!!\(^-^)/ (2017年9月18日 14時) (レス) id: eb197fc214 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - ハルさん» ハルさんも高校受験何ですか!!私も一緒です笑 いえいえ、全然大人じゃないですよ…中学3年のまだまだ未熟者です。私自信、ハルさんの方が大人っぽいです!ハルさんも身体に気を付けて勉強や更新の方頑張って下さい!応援してます!! (2017年9月18日 12時) (レス) id: 684ce788b1 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 銀皐月さん» 先生に、ですか!! それは素敵な夢をお持ちですね!! 「なれる」なんて無責任なことは言えませんがなれるように祈ってます。きっと良い先生になるんだろうなぁ、なんて思いつつ... その時は素敵な生徒にも会えると良いですね! コメント有難うございました (2017年9月18日 9時) (レス) id: 30e1da4c35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:高杉同盟 x他1人 | 作成日時:2017年7月31日 23時