球団職員に花束を。その3

番外編◎花粉症 byり子さま ページ24

special thanks り子さん

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「遥輝くん、しばらくキスは無しの方向で」

朝一で球場へ行けば、マスクに眼鏡で顔面完全防備のAが俺にそう告げた。いや、なに？朝一なおかげでまわりに人は全くいないし、おはようのちゅーでもしたろかな、と思ったのにこの一言。

俺、知らんうちになんかしたっけ。と、ここ最近の自分の行動を振り返ったものの、特に何かをした覚えはない。

「なんで？俺、Aとちゅーしたいんやけど」

「だめ、だめったらだめ」

「やーかーらー何でやーーー」

「…笑わない？」

Aの言葉にこくりと頷けば、マスクを外して神妙な面持ちで口を開いた。この隙にキスしてやろうかとも考えたけれど、怒られそうだからやめた。自制の出来る遥輝くん偉い。だからキスしよ。

「花粉症です。鼻づまりが酷いからキスなんてしたら窒息死しちゃう」

「そんだけ？」

「そんだけって何！私が窒息死しちゃってもいいの？あーやだやだ。これだから遥輝くんはもう」

「理由が可愛いのでキスしたいんですけどどうですか。どうぞ」

「死にたくないので嫌です。どうぞ」

そうは言ったって俺こそ花粉症やし。知らんの？俺の屋外球場での完全装備。ググッたら出てくるから見て。あ、やっぱり見て欲しくないかも。ドーピング検査とか言うもんのせいで薬も飲めへんし。ドーピング検査に花粉症の薬が引っかかるって何？花粉症の薬でムキムキになるとでも言うんか。

「遥輝くんも花粉症なら尚更！共倒れなんて嫌だ！」

「キスで窒息なんてそうそうせぇへんって」

「だって遥輝くん舌入れてくるし」

「毎回じゃないし。それとも入れて欲しいん？Aのえっち」

「ちが、もー！」

顔を真っ赤にして地団駄を踏むAが可愛くて、ついついキスをしてしまった。するとAの顔はますます赤みを帯びて。

「ねえ！」

「ええやん窒息死しとらんもん」

「でも、」

「好きやからキスしたいねんもん」

「っ、大変だ」

ぐおお、と胸のあたりを押さえて2、3歩後退りをしたA。どうしたん、と聞けば、とびきり可愛い答えが帰ってきた。

「窒息死の前にキュン死にする。しばらく近づかないでください」

「前途多難すぎる」

「遥輝くんがそんなこと言うのが悪い。私だって本当はキスしたいもん」

でも花粉症でブスだし、と卑屈になるA。あかん、可愛い。

「死んだら死んだでそんときはそん時やな」

「もう！」

心中できるなら本望やし、ともう一度キスを落とした。

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