6話 ページ7
真はしかめっ面でAを睨み、最初に言ってたろ、と呟いた。
確かに、先程Aは言った。自分がこの遊びを辞められるように説得してみろ、と。
「流石ですね」
Aがぽそりと、まるで間違えて出てしまったかのように小さく言った。
「自分が不愉快だから私を助けると。
自分に救われれば私にもいいことがあるから黙っていうことを聞けと」
目を見開いたまま、Aは真の話を整理し始めた。蝉は、真が言い終わったのを待っていたかのように、再び鳴きだす。
「貴方はやはり、私を楽しませるのが上手ですね」
「楽しませようと思ってねえよ」
Aは不敵な笑みを浮かべて、真の手を振り払い、自転車で走る準備を始める。
「私はもう帰ります」
「ああ」
またぶっきらぼうな真を見て、愛おしそうに苦笑いしたAは、ふっとどこかに消えた。
最初から神出鬼没ではあったが、自転車と共に消えたのには驚いた真は、毎回毎回どうやってんだよ・・・・と呟いた。
しかし、そんな人間をもう一人知っている真は、その人間のことを思い出して顔を顰めた。
純粋な"イイコちゃん"を見ていると苛立って仕方がないのは、羨ましいからなのか。それとも今回のように、昔自分が"イイコちゃん"だったからだろうか。
自分はどこまで黒いのだろうと自嘲しながら、それでも人助けをしてしまう、過去に縛られているようではまだ青いのか。
考えながら踏切を越えたが、こびり付いた赤いそれが目に入ると、何も考えたくなくなり無心で帰路についた。
いつまで真は、Aは苦しむのかは、神のみぞ知る。
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ルナ(プロフ) - 番外編とか続編とか作ってみて下さい!! (2020年5月18日 18時) (レス) id: 9be15952a3 (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - 更新頑張ってください!! (2017年11月12日 23時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
氷留痲 - 追加・・・更新頑張って下さい!! (2017年2月6日 0時) (レス) id: a6e8c41ba4 (このIDを非表示/違反報告)
氷留痲 - 面白い!貴方は花宮+赤司のIQのお方ですか!?((尊敬 (2017年1月22日 20時) (レス) id: a6e8c41ba4 (このIDを非表示/違反報告)
夢喰。(プロフ) - 内容がミステリアスで思わず魅入ってしまいました。更新、気長に待ってます( ´ ▽ ` )ノ (2016年12月28日 21時) (レス) id: bb18efc351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:魅乃瑠 | 作成日時:2016年6月19日 23時