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4話 ページ5

この日も、花宮は踏切に来ていた。


いつもより早めに来たのは、もっとAのことを知りたいと思ったからだ。知ることが救うことにつながるというのは、良くある話だ。


踏切には、Aと可愛気のない銀の自転車が立っていた。


「いつもより早いですね。そんなに私と話がしたいですか?・・・・良いですよ、私がこの遊びを辞められるように説得してみて下さい」


どうせ、楽しそうだから、という理由からなのだろう。


Aは待ちきれないようで、目を輝かせていた。だがどんなに輝いていても、やっぱりAの目はくすんでいるというか、闇を抱えているように真には見えた。


蝉は必死に鳴いている。まるで、Aの代わりに真を急かしているようだった。


「今日は説得じゃねぇ。お前を知りに来た」


Aの期待通りにできない自身を責めている自分がいる気がした。だが、Aの期待通りにしてはきっと真はAの遊びを止めることは出来なくなってしまうだろう。


Aには、真にさえ一杯食わせる力があるようだ、と真は感じている。



「何ですそれ、面白そうですね。何でも聞いてくれて構いませんが」


それでも気に召してくれたよう。


今日は年相応の表情をするな、と真は思ったが、やっぱり瞳は闇色で。単に、家庭環境が悪いとか、そんなことではない気がした。


「あぁ、でも、あまり探らない方がいいかも知れませんね」


Aは先程までの態度と一変して、真の言葉を否定し始めた。話始めようとしていた真は面食らったが、すぐに睨んで返した。


「だって貴方は、私のことを知らないことに惚れているでしょう?


貴方は、過去の自分と同じ遊びをして、自分よりずっとミステリアスで異常な私に惚れているんですよ。夢を見ている、と言えばいいのでしょうか」


Aが目を伏せながら語りかけてくる。


何故か、自分の心を知ったような口で喋るAにむかついた。それは、図星だからなのだろうか。

「きっと、この私もただの可哀想な小さい女の子だと貴方が知れば、貴方は私の元に来なくなります。

貴方は私を捨てるはず。この遊びに、参加してくれなくなりますよ」


Aにとって、真との言い合いも戯れの一部らしい。そういえば、そんな台詞を吐く女の短編小説があったな、なんて関係のない話だ。


一際大きいツクツクボウシの鳴き声がしたが、デクレッシェンドして他の蝉の鳴き声に滲んでいった。

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ルナ(プロフ) - 番外編とか続編とか作ってみて下さい!! (2020年5月18日 18時) (レス) id: 9be15952a3 (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - 更新頑張ってください!! (2017年11月12日 23時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
氷留痲 - 追加・・・更新頑張って下さい!! (2017年2月6日 0時) (レス) id: a6e8c41ba4 (このIDを非表示/違反報告)
氷留痲 - 面白い!貴方は花宮+赤司のIQのお方ですか!?((尊敬 (2017年1月22日 20時) (レス) id: a6e8c41ba4 (このIDを非表示/違反報告)
夢喰。(プロフ) - 内容がミステリアスで思わず魅入ってしまいました。更新、気長に待ってます( ´ ▽ ` )ノ (2016年12月28日 21時) (レス) id: bb18efc351 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:魅乃瑠 | 作成日時:2016年6月19日 23時

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