こいつ、私の上司です。2

第58話 ページ9

貴久side









「夏恋____っ?!」









病室にたどり着くと



そこには夏恋の両親もいた









夏母「貴久くん……わざわざありがとうね。


あと___もう少しみたい。」









はっきりとは言わない。









言うわけがない。









けれど、もう分かってしまった。









その時が来ていると。









夏「貴久……」




「なに？！」







枕元へ行くと





夏恋はすっかり細くなったその手を挙げた。









微かな温もりの残る指先が




俺の頰に触れて




懐かしいあの夏が蘇る。









夏「好きな人……いるで……しょう？」





「え___」




夏「水族館に…….行ったときも分かったよ___


貴久の…目の中には……誰かがいて」




「もう___しゃべんなよ___」




夏「んん、だい…じょうぶ。


きっと……とっても…素敵な子なんだよね。」




そう___素敵な…


素敵すぎる奴で…





夏「わか……る。


だから


おね……がいなの。


絶対……絶対にその子…を…幸せにして。


やく……そ……く。」




ゆっくりと


その手が降りて行く。





「俺___この約束果たせるか分かんないよ__」






いつだって




恋なんてうまくいかなくて




ほら




今だって目の前で




守れなかった命が




消えようとしてる。









夏「やくそく……」






「うん___」








今はただ


こう答えるしかない。









自然に


目の奥が熱くなって来て









「泣くとか___ダサすぎ___」





次々と涙が溢れ出して来て









目の前が霞んで









そんな中









１つの命が









.









.









消え去った。

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