9.胡蝶さん ページ9
「症状もだいぶ収まったようですし、もう大丈夫ですよ」
そう言ってニコッと笑うのは、私を診て治療してくれたという胡蝶さん。
つまり、あのお客様が言っていた胡蝶さんとは彼女の事らしい。
「ありがとうございます」
「アオイさんが先に診てくださっていたお陰ですね」
そう言って、彼女の後ろに立っている少女を振り返る。
その人は昨日ここに着いたとき、最初に出て来て案内してくれた人だ。
「いえ。大したことはしていません」
「そんなことありませんよ。傷口の消毒は済んでいましたし、治療に必要な薬品や道具の準備もバッチリでした」
そう言ったあと、胡蝶さんが私を振り返る。
「そう言えば、お名前をお伺いしても?」
「あ、Aといいます」
「Aさんは、時透さんとはお知り合いなんですか?」
「え?……とき、とうさん?」
知らない名前が出て来て戸惑う。
そんな私を見て胡蝶さんとアオイさんが不思議そうな顔をする。
「昨日、Aさんをここまで運んできてくれた方です」
「あぁ!…えっと、無一郎さん?であってますかね?」
「はい」
「彼、私の家の食堂によく来るお客様なんです」
私が答えると「なるほど。なるほど」と胡蝶さんが頷く。
「時透さんが貴女の事を“食堂で働いてる娘さん”と覚えていらっしゃったので、珍しいなーとは思いましたが、常連客だったんですね」
「あの、珍しいって……?」
「あの方は昔の記憶を無くされていて、最近の出来事でも、彼にとって重要でないことは覚えていられないんです」
「えっ?」と驚く。
確かに、自分でも「どうせすぐ忘れるから」と言っていた。
本人に忘れっぽい自覚はあったようだし…
でも、記憶喪失だなんて………
それに、学生さんだと思っていた彼は学生ではなかった。
「胡蝶さん。昨日、私を襲った化け物のことと、…それから皆さんのこと、……聞いてもいいですか?」
私が尋ねると胡蝶さんは頷いてくれた。
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月見(プロフ) - 香恋さん» いつも読んでくださり、ありがとうございます!褒めて頂いてとても嬉しいです(*^^*)ゆっくりになりますが、更新頑張ります!! (6月26日 7時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - 月見さんの久しぶりの鬼滅作品…!!!しかも無一郎くん( ; ; )嬉しいです!!刀鍛冶の里編ロスを埋めて下さいます泣 相変わらずキャラが喋ってる様に台詞が聞こえてきます。続きとても楽しみにしています☺️ (6月25日 23時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2023年6月8日 22時