6.声の正体 ページ6
よく分からない状況にうっすらと目を開く。
暗くてよく見えないけれど人の姿が確認できた。
そして、その人の手には刀があって驚く。
「バカにしてんのか!」
グッと私の首を絞める力が増す。
「ぅっ…!!」
苦しくて、目の前が段々と暗くなって何も見えなくなる。
意識が飛びそうだった。
「そんなつもりはないけど、そうかもしれない。………だって、お前もう終わりだから」
「は?」
「霞の呼吸 漆ノ型 朧」
次の瞬間、フッと絞められていた首が楽になる。
代わりに私の膝の上に何かがポトッと落ちた感覚。
「ぎゃあぁぁぁ!!」っと耳元に響く異形の叫び声。
やっと体が解放されて息が出きるようになった私は、もがくようにそこから離れると「ゴホッ!ゴホッ!!」と咳込む。
「きっ、切られた!この俺が!!」
「とても煩い……静かにしなよ」
そんな声のあと、ビュンッと風を切るような音がした。
漸く咳が落ち着いてきた私は、目を開いて状況を確認する。
私の少し先の地面で異形の体が塵になって消えていくところだった。
「っ!…何っ!?」
混乱する頭で更に辺りを見回す。
そうして「大丈夫?」と問いかけてくる声の主を確かめる。
見覚えのある少し変わった黒っぽい服装に長い髪。
体は小柄で綺麗な白い肌に綺麗な瞳………
「お、客…様……?」
暗がりだけれど見間違えようがない。
いつもお昼のピークを過ぎた時間にお店に来る常連さんだ。
「…お客様?………誰?」
「え…?あっ!私は食堂で働いてるAです!!貴方はいつもふろふき大根を頼まれるお客様ですよね!?」
聞き返せば、少しの間のあと彼が口を開く。
「食堂の………誰だっけ?」
「Aです!」
名乗ったばかりなのに、もう忘れられた。
けれど、私の事は食堂の人だという認識はあるらしい。
「と言うか、どうして刀なんか持ってるんです!?」
どう見ても警察には見えないけど?
ザッと足音がして彼が私に近付く。
「血が…」と呟かれた言葉に「えっ?」と驚きながら自分を見る。
けれど何処から血が出ているのかよく分からない。
そう言えば、肩と首の辺りがヒリヒリしているような………?
ペタペタと肩と首を触るとヌルっとした感触。
傷口に触れたのか、ズキッと痛んで思わず顔を歪める。
「ダメだよ。無闇に触ったら……胡蝶さんに怒られる」
「こ、ちょう……さん?」
それは誰?と思っていると、彼が転がっていた買い物かごに気付く。
58人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月見(プロフ) - 香恋さん» いつも読んでくださり、ありがとうございます!褒めて頂いてとても嬉しいです(*^^*)ゆっくりになりますが、更新頑張ります!! (6月26日 7時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - 月見さんの久しぶりの鬼滅作品…!!!しかも無一郎くん( ; ; )嬉しいです!!刀鍛冶の里編ロスを埋めて下さいます泣 相変わらずキャラが喋ってる様に台詞が聞こえてきます。続きとても楽しみにしています☺️ (6月25日 23時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見 | 作成日時:2023年6月8日 22時