4.急な買い出し ページ4
その後も彼はいつも通り決まった時間にやってきた。
前々から、たまに1〜2週間ほど来ない日もあるけれど、変わらずに来てくれる常連様だ。
そして、今週はその珍しく彼が来ない時期のようだった。
学生服の様なものを着ているから勉強が忙しいのか、はたまた何かの研究をしているのか………
なんて少し考えてしまう。
今月から繁忙期に入った我が食堂は朝から晩まで大忙しだった。
夜遅くまで厨房で仕込みをするお爺ちゃんとお父さん、お婆ちゃん。
お母さんは自分たちの夕食の準備や家事に追われている。
「A、今数えたら大根が足りねぇんだ!悪いけど何本か買ってきてくれ!!」
夕方、慌てた父が私にそんなお使いを頼んだ。
仕入れが足りてないことはたまにあることだ。
そんな時は大抵手が空いている私が買いにいく。
けれど、今日はもう夕方だし、早くしないと八百屋さん閉まっちゃうよ!
その前に大根が残ってくれているかどうか!!
お金を預かった私は走って八百屋を目指す。
「おじさぁあああん!!」
お店が見えてきた頃、顔見知りの八百屋のおじさんに手を振る。
「そんなに慌てて今から買い出しかい?今日は何だい?」
「だっ、……大根が、……欲しくてっ……」
はぁはぁと息を切らしながら伝える。
「大根かぁ、今日はもう最後の一本だな」
「…いっ、……いっぽん………」
へなへなと座り込む。
流石に一本は少なすぎる。
せめて三本は欲しい。
とりあえず、最後の一本を購入して、私はもう少し先にある別の八百屋まで走ることにした。
*****
閉店の準備をしていた八百屋にギリギリ滑り込んだ私は、大根を更に三本ゲットして帰路を歩いていた。
大根と言えど、四本もあると流石に重い。
行きに走って疲れきっていた私は、買い物かごを持ち替えながら、ゆっくりと歩いて家を目指す。
冬だから日が暮れるのは早い。
すっかり日が暮れちゃった………
それに、夜道って苦手なんだよね。
だって、お化けとか出たら怖いでしょ!?
なんて、気持ちだけは帰り道を焦っていたけれど、流石に疲労が溜まっていて、もう走る気にはなれなかった。
寒さも合間って、少し早歩きで先を急ぐ。
ザッザッと後ろからは私とは別の足音。
最初は大して気にならなかったそれが段々と速くなって近づいて来る。
私も自然と小走りになった。
速くなっていく足音が私の恐怖を助長していく。
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月見(プロフ) - 香恋さん» いつも読んでくださり、ありがとうございます!褒めて頂いてとても嬉しいです(*^^*)ゆっくりになりますが、更新頑張ります!! (6月26日 7時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - 月見さんの久しぶりの鬼滅作品…!!!しかも無一郎くん( ; ; )嬉しいです!!刀鍛冶の里編ロスを埋めて下さいます泣 相変わらずキャラが喋ってる様に台詞が聞こえてきます。続きとても楽しみにしています☺️ (6月25日 23時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2023年6月8日 22時