12.送迎 ページ12
蝶屋敷から家までの道のりは思っていたよりも長いようだった。
なぜ分かるかと言うと、中々私の知っている道に出ないからだ。
おまけに無一郎さんは足がとても早い。
行きは抱き抱えてもらって走っていたから、あっという間だった道のりも、帰りはいつ辿り着くのかも分からなかった。
「あのっ、……無一郎さん、少し………待ってください」
『毒の影響で体力が落ちて体が疲れきっていますから、2〜3日は走ったり激しい運動をしてはいけませんよ』
出る前に胡蝶さんが言っていた。
いつもなら小走りで追い付けたかもしれないけれど、今は少し息が上がっている。
私の言葉で振り向いた無一郎さんが少し顔をしかめた。
あれ、何か変なこと言ったかな?
あっ!………もしかして、下の名前で呼んだのが不味かった?とか?
「えっと、勝手にしたの名前で呼んでごめんなさい。………時透さんとお呼びした方が良かったですか?」
「……そうじゃなくて。………何で呼び止めたの?」
「え?」
呼び止めたことに対して不機嫌になってたの?
「すみません。……私、追い付けなくて、もう少しゆっくり歩いてもらえますか?……まだ走っちゃ駄目だって胡蝶さんに言われたんです」
伺う様に彼を見ると、しかめていた表情が元に戻った。
「もっと早く言いなよ」
「すみません」と答えて、待ってくれている彼の側まで駆け寄る。
「走ったら駄目なんでしょ」
「あ、…すみません」
「何回も謝られても困るんだけど」
「すみません。………あっ!」
気付いて口元を手で覆うけれどもう襲い。
呆れたような息を吐いた無一郎さんが「行くよ」と一言告げて歩き出す。
今度はさっきよりもゆっくりと。
「………あの、下の名前で呼んだことは怒ってないんですか??」
気になった私は少し勇気を出して質問する。
「別に……」
返ってきたのは素っ気ない返事だった。
けれど、否定も肯定もしないってことは嫌じゃないって解釈でいいんだよね?
この時、彼のことはこれからも無一郎さんと呼ぼうと私は決めた。
*****
「A!!」
家に帰ると家族が全員出てきて、私をぎゅっと抱き締めた。
「本当にありがとうございました!!」と無一郎さんに何度も頭を下げる父と母。
その時に私も改めてお礼の言葉を口にした。
「夜は危ないので、外出しないように気を付けてください……」
それだけ言い残して彼は去っていった。
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月見(プロフ) - 香恋さん» いつも読んでくださり、ありがとうございます!褒めて頂いてとても嬉しいです(*^^*)ゆっくりになりますが、更新頑張ります!! (6月26日 7時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - 月見さんの久しぶりの鬼滅作品…!!!しかも無一郎くん( ; ; )嬉しいです!!刀鍛冶の里編ロスを埋めて下さいます泣 相変わらずキャラが喋ってる様に台詞が聞こえてきます。続きとても楽しみにしています☺️ (6月25日 23時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2023年6月8日 22時