11.感謝 ページ11
私は昨夜、帰り道に野犬に襲われたことになっているらしい。
「“鬼に襲われました”なんて、鬼を見たことがない方に伝えても、信用して貰えませんからね」
と胡蝶さんは笑っていたけれど、本当にその通りだと思う。
私も本物の鬼を知らなければ、そんな話し信じなかっただろう。
胡蝶さんが預けた文には、私が道で転んだ時に噛まれた肩の手当てを受けて休んでいて、明日帰ってくることを記したそうだ。
「それから、ここからが大事な話なんですけれど、Aさんは特殊な方で、稀血と言って鬼にとってのご馳走なんです」
「…ま、まれち?」
そう言えば、昨日あの鬼がそんなことを言っていた気がする。
そうだ!!ご馳走だと言われてゾッとした記憶がある!
思い出すだけで、背筋がゾワッとした。
「時透さんが鬼の言葉を聞いていたので、間違いないでしょう。ですから、今後はこれをお持ちください」
渡されたのは、お守りのような袋だった。
そこから花のいい香りがする。
「これは…匂袋ですか?」
「はい。藤の花の香りです。鬼は藤の花が苦手ですから、鬼避けになります。これからは持ち歩いてくださいね」
「分かりました。………それにしても、私今までよく鬼に襲われずに生きてこれたなぁ」
頷いた後、独り言のように呟くと胡蝶さんが「それはご実家の食堂のお陰かもしれません」と話を広げた。
「え?」
「食堂では毎日食べ物の匂いがしていますから、それで血の匂いが誤魔化されていたのではないでしょうか?」
「なるほど」
そうだとしたら、家業に感謝しなくちゃ。
*****
翌日、もう一度胡蝶さんの診察を受けた私は無事帰宅出来ることになった。
言われた通り、部屋で待っていると無一郎さんが現れた。
「……君だよね?一昨日僕が助けた人」
確認するようにジッと見つめられる。
そんな風に聞くってことは、私の顔は覚えてないんだ………
見つめられたドキドキと、忘れられていた事実に少し残念な気持ちを抱えて私は口を開く。
「はい!あの、助けて頂いてありがとうございました!!」
「いいよ。僕の管轄地域で起きたことだし、それにやるべきことをしただけだから……」
「………。」
何て言うか、凄くドライだ。
でも、これは誰にでも出来ることじゃないと思うけどな。
「無一郎さんが私の家に荷物を届けてくださったと聞きました。その件もありがとうございます」
私は精一杯の感謝を込めて頭を下げた。
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月見(プロフ) - 香恋さん» いつも読んでくださり、ありがとうございます!褒めて頂いてとても嬉しいです(*^^*)ゆっくりになりますが、更新頑張ります!! (6月26日 7時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - 月見さんの久しぶりの鬼滅作品…!!!しかも無一郎くん( ; ; )嬉しいです!!刀鍛冶の里編ロスを埋めて下さいます泣 相変わらずキャラが喋ってる様に台詞が聞こえてきます。続きとても楽しみにしています☺️ (6月25日 23時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2023年6月8日 22時