無感情ブラックⅡ【刀剣乱舞】 (ページ3)

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.薬研藤四郎

「だからボク、決めたんだ。いつか絶対、ボクがこの手で、この刃で、あるじさんを殺すこと」

　ニコリ、と歪に青い瞳が微笑む。

　──狂っている、と、そう感じた。

　たとえどんなことがあろうと、刀剣男士である俺たちが主に刃を向けることは許されない。それが出来てしまえば、すべてが壊れてしまう。

　それは、刀としての終わりだ。

「おまえの主は、もういない」

　ヒヤリとしたものを首に感じながら、呟く。

「……乱。おまえがこの本丸で、とても苦しい思いをしてきたのは知ってる。おまえだけじゃない、この本丸の全員だ。いち兄も、厚も、後藤も、みんなみんな、無茶な進軍をさせられて、ろくに手入れもされず、折れた同胞の亡骸を、泣きながら蔵に納めていた。……知っているさ。新入りでもな。この本丸に来たのは、いち兄よりも早かったんだ。中途半端に霊力を注がれ、耳だけ動いたまま、蔵に響く悲痛な声を、ひたすらに受け止め続けた。……動くことも出来ずに」

　乱は無表情だった。いち兄は凍りついたように動かなかった。俺っちは、自分の口が何か異様なことを口走っているのを知りながら、ぎらぎらと変わらず兄弟を睨み続けた。

　それを止めるすべを、知らなかった。

「なあ乱、おまえはいったよな。自分たちがどんなに苦しんだか、苦しめられたか、おまえは知らないんだって。なら聞くが、おまえは俺っちの気持ちがわかるのかよ？いちばん蔵に亡骸を納めに来てたのは、おまえら粟田口なんだぜ。……俺っちが、泣きながら破片を箱に詰める弟を見て、すこしも心が痛まなかったと思うのかよ？」

　顔面蒼白のいち兄が、何度も何度も首を振った。俺っちの声は、情けねえくらいに弱々しく震えている。

「入れ代わり立ち代わり蔵に来る兄弟たちは、その都度どこか感じが違った。……それを見て、何も感じずにいられるほど俺っちが鈍感じゃないことは、おまえがいちばんよく知ってるはずだぜ。……なあ、おまえにわかるか？動くことの出来ない体に、もう息をしてない兄弟たちの破片がこすれる感触。それも一度や二度じゃない。何度も、何度もだ。その度に、キイキイと気色の悪い金属音が鳴る。勘弁してくれと思うのに、やめろとも、嫌だともいえない。大将が来てくれるまで、ずっと……俺はそこいたんだ」

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