無感情ブラック【刀剣乱舞】 (ページ50)

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　そうと決まれば早速作業に取りかかろう。

　私は立ち上がり、一先(ひとま)ずぐるりと部屋を見渡した。

　前任者の私物は、本丸の引き継ぎをする際にすべて政府が引き取ったと聞いた。故、恐らく引き出しや箪笥の中といったような、そんなあからさまなところには置いていないだろう。

　とはいえ、何の変哲もない写真が、天井裏や床下に置いてあるとも考えにくい。……勿論、何者かが意図して隠したのなら別だが、そんなことをする理由がわからない。何より、この写真はモップを出した時にいっしょに出てきたのだ。そんなむつかしいところにはないだろう。

　しばしの思考のあと、私は、先程ひっくり返したところをもう一度ひっくり返すということを思いついた。

　手元の写真の出処がわかれば、似たようなものが見つかるかもしれない。それに、考えてみれば、写真を一枚一枚別々に保管するより、まとめてある可能性の方がよほど高いのだ。

　手始めに部屋の隅にある棚に近づき、ぽち、とボタンを押す。ちなみにこちら、文明の利器に頼った全自動式の扉だ。およそ日本家屋にふさわしくない絵面ではあるが、便利なのだから仕方ない。

　扉が完全に開くと、途端、ぶわりとカビ臭いほこりの臭いが広がって、たちまち辺りに飛散した。その一連の流れに若干のデジャヴを感じながら、物がまばらに詰め込まれた棚をかきまぜる。

　出てきたのは、今どき珍しい紙の資料だとか、滅多に目にしない文具──ホッチキスや鉛筆のたぐいだ──など。古き良き青いポリバケツの中からは、使われた様子のない消臭剤だとか、虫除けの缶だとかが転がり出てきた。

　こんなものが残っているなんて、一体政府は何を引き取ったのだろう。

　粗方物をかき出すと、後に残ったのはゴミともいえない小物たちだった。古めかしい異国の銅貨、プラスチックの破片、ペットボトルのキャップ、包装紙の切れ端。その他諸々。その中に、目当てのものはない。思わず嘆息して、全部ゴミ袋に入れてしまう。その際、少しほこりを吸ったのか、ゲホゲホと一、二度咳が出た。

　写真探しはなかなか難航した。その後もさまざまな場所を探したか、得られた情報は少なく……ほぼ無に近い。

　まあ今の時代、写真をプリントアウト出来るところなんてそうそう限られている。きっと一度だけ気まぐれに写真をプリントして、それがこれだったのか、あるいは残りをすべて政府が引き取ってしまったのか、どれかだろう。

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