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「……」




 一寸の間もなく返された言葉に、少々面食らってしまう。

 そうか……確かに彼ら刀剣というものは、今までに何度も主を看取ったり代わったりしてきたのだ。今更主のひとりが代わったところで、どうとも思わないのかもしれない。前任にはあまりいい扱いをされていなかったみたいだし……そういうものなのかもしれない。

 そう納得し、私は「では」と母屋の方を指さした。




「今、お風呂を掃除しようとしていたところなんです。こんなことを神様に頼むのは烏滸がましいんですけれど、もしよろしければ手伝って頂けませんか?」

「は。主命とあらば」




 別に、主命ではないんだけれど。「主命とあらば」は長谷部様の決まり文句のようなものだと聞くし、深い意味はないんだろう。




「……じゃ、行きましょうか」




 クレンザーの片方を長谷部様に押し付け、私たちは風呂場を目指して歩いた。途中、他の刀剣様方の伺うような視線を何度か感じたけれど、長谷部様と一緒だからか、手出しはしてこなかった。

 ふむ。裏切り者だなんだと斬り付けに来る方が一人もいないところを見る当たり、長谷部様は随分と彼らに信用されているらしい。……





 二分程度で到着した風呂場は、ものすごく酷い有様だった。

 壁じゅう至る所にカビがはびこり、窓が空いているからか枯葉も積もり、それが腐って腐臭を(かも)し出している。蜘蛛やナメクジなどの虫がいないのは唯一の救いかとも思うが、黒く素早い彼奴だけはしっかりといる辺り、悪意を感じざるを得ない。


 前任が死んでから私がここに来るまで、だいたい二週間……から一ヶ月程度だと聞いている。まさかそんな短い時間でここまでなったのではあるまい。有り得ないとは思うが、もしかして、彼らは風呂に入っていなかったのだろうか。


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フキ(プロフ) - 好きです!続きがとっても気になります!! (2022年6月15日 23時) (レス) id: 171aa22f7a (このIDを非表示/違反報告)
高橋かかし(プロフ) - あんこもちさん» アーーッそうでした!万死……、 すぐに修正します!ありがとうございました! (2019年12月7日 12時) (レス) id: ad9f3afa3e (このIDを非表示/違反報告)
あんこもち(プロフ) - 鯰尾と骨喰は元大太刀ではなく薙刀では? (2019年12月7日 11時) (レス) id: 1c5e807086 (このIDを非表示/違反報告)
高橋かかし(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります´ω`* (2019年8月2日 13時) (レス) id: ad9f3afa3e (このIDを非表示/違反報告)
0dh38w152yz4d3p(プロフ) - とっても面白いです!更新楽しみにしてます(*^^*) (2019年7月31日 16時) (レス) id: b48a4a1bf4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:高橋かかし x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年11月18日 20時

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