(26) ページ26
.
薬研様は、比較的速やかに手当を終わらせてくれた。
私に備わっている自己回復能力が働いていたのか、腹の傷はそんなに大したことにはなっていなかった。これには薬研様もひどく驚いていて、しきりに私の腹を眺め回していた。
こんのすけが「薬研様、セクハラです」と訴えてくれなければ、何時間でも傷の検査をしていただろう。
まあ、別に構わないのだが。
その後は鶴丸様が持ってきてくださった地図を二人──正確には一人と一振りだが──で眺めながら、翌日からの行動について話し合っていた。
主にどこから攻略……失礼、切り開いていくかの話し合いだ。
最終的に、先に風呂と厨の確保をすることに決め、私は床に着いた。薬研様は張り番をすると意気込んでいたが、結局一時間と経たずに熟睡してしまっていた。
練度の関係か薬研藤四郎の気性か、あるいは個体差かはわからないけれども、仮にも刀剣男士がどうなのだろうかと思うところではある。しかしまあ普通に可愛らしいので、起こさずそっとしておくことにした。
そうして私もしばらく寝入っていたのだが、眼前に現れた気配にはっと反射的に瞳を開けた。いつの間に侵入されたのだろう。上半身を起こそうとすると、グッと首に力が込められ、結局身体を起こしかけた体制のまま硬直する。
微かに溢れる殺気に、薬研様も反応したのだろう。私が瞬きをするかしないかのうちに、ガラリと勢いよく襖を開き、刀身を侵入者の首に押し当てていた。その素早さにはさすが短刀と感嘆せざるを得ない。全く見事なものである。
「「動くな」」
薬研様と侵入者、ふたつの声が重なった。薬研様は侵入者の首を捉えているが、反して侵入者は私の首を捉えている。まさにふたつにひとつ、緊迫した状況だ。
「……あなたの、お名前を聞かせてください」
私がそう問うと、目の前の気配は僅かに
骨喰藤四郎……確か脇差の一種だったはずだ。なるほど道理で隠蔽が上手いはずである。
「承知しました、骨喰藤四郎様。あなたの望みはなんですか。こうまでして侵入してきたからには、何か私にしたい、もしくはして欲しいことがあるのではないですか」
私は努めて冷静にそう尋ねた。やがてまた僅かな間の後、骨喰様は囁くような声でこういった。
「兄弟を、どうか助けて欲しい」
.
514人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フキ(プロフ) - 好きです!続きがとっても気になります!! (2022年6月15日 23時) (レス) id: 171aa22f7a (このIDを非表示/違反報告)
高橋かかし(プロフ) - あんこもちさん» アーーッそうでした!万死……、 すぐに修正します!ありがとうございました! (2019年12月7日 12時) (レス) id: ad9f3afa3e (このIDを非表示/違反報告)
あんこもち(プロフ) - 鯰尾と骨喰は元大太刀ではなく薙刀では? (2019年12月7日 11時) (レス) id: 1c5e807086 (このIDを非表示/違反報告)
高橋かかし(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります´ω`* (2019年8月2日 13時) (レス) id: ad9f3afa3e (このIDを非表示/違反報告)
0dh38w152yz4d3p(プロフ) - とっても面白いです!更新楽しみにしてます(*^^*) (2019年7月31日 16時) (レス) id: b48a4a1bf4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ