無感情ブラック【刀剣乱舞】 (ページ16)

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「……やげん、さま？」

　ぱちぱちと何度か瞬けば、薄ぼんやりした視界がハッキリとクリアになった。私はゆっくりと体を起こし、心配そうにこちらを見る薬研様に目を向ける。

　正直、状況が飲み込めない。

「おはよう……ございます。あの、私はどのくらい寝ていたのでしょうか」

「寝てたんじゃない、気絶してたんだろ。血が流れすぎた」

　薬研様は少し怒りを含んだ声でそういうと、テキパキと包帯を取り替え始めた。その手際の良さに瞠目する。そういえば、薬研藤四郎は医療に精通していると聞いたことがあった。誰に聞いたのかは、もう覚えていないが。

「本当は本丸に帰りたかったんだが、生憎帰り方がわからなかったからな。ああ、どのくらい気絶してたかって質問については──そうだな。本当に少しだ。半時も経っていないんじゃないか」

　あくまで「気絶」のところにイントネーションを置いて、薬研様は答えた。そして、最後にぺしっと私の腹を叩き、「もうあんな無茶はやめてくれよ。心の臓が止まっちまう」と目を伏せていった。

　その声があまりにも切実だったので、私はつい、こくりと頷いてしまった。

　正直なところをいうと、この任務についた限り、多少の無茶をすることは承知の上だったのだが、薬研様のこの様子を見ると、しばらくは許してくれなさそうだ。

　──それだけ、“主”として大切にしてくれているのだろう、と思う。なんだか寂しくて、少しだけむず痒かった。

「さて、これからどうするんだい？できることなら、俺っちはもう帰りたいんだが」

「え」

「当然だろう？あのな大将。お前さんの腹のキズは、お前さんが思ってるよりずっと深いんだ。ほっといたらまた出血多量で倒れて、最悪、死ぬぜ」

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