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──鬼だ、と思った。
ずんぐりとした赤い
「大将!」
薬研様の悲痛な声が響く。ゆっくりとした動作で腕が掲げられ、刹那、ぶん、と空気を裂く音とともに、何かが振り下ろされた。
「っ!」
こちらとて兵器だ。戦争のある時代に生まれた“もの”なのだから、当然のように戦闘経験がある。銃火器を振り回したこともあれば、ナイフ一本で敵陣に乗り込んだこともあった。
今はもうその役目をもらえないとはいえ、身体に染み付いたものは中々消えないものだ。そもそも、人を殺すために生まれた私たちが、どうしてその
振り下ろされた大太刀を、咄嗟に身体を捻ることで回避した。
ごろりと土の上で一回転し、そのまま立ち上がって駆け出す。武器を持っていない私は、今この場ではただの足手まといだ。
かといって、練度1の薬研様にこの大太刀が倒せるとも思えない。敵は纏っている色で強さが変わると聞いた。赤は、最高ランクだ。
「薬研様、逃げましょう」
「っ、だが」
「今あなたが戦えば、あなたは折れます。私はあなたを借りているのです。あなたをここで折るわけにはいかない」
そうだ。薬研様は本丸の蔵にあったものだ。だとしたら、所有権は本丸の皆様にある。
「本丸にはあなたの兄弟がいます。ずっとあの場にいたあなたならわかるはずです。あなたが折れるということが、どれほどあなたの兄を悲しませることになるのか。あなたの弟を、どれほど泣かせることになるのか」
「……それは」
「卑怯な物いいだということは理解しております。ですが、どうか。ここはひとつ、私の頼みを聞いてはくれませんか」
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フキ(プロフ) - 好きです!続きがとっても気になります!! (2022年6月15日 23時) (レス) id: 171aa22f7a (このIDを非表示/違反報告)
高橋かかし(プロフ) - あんこもちさん» アーーッそうでした!万死……、 すぐに修正します!ありがとうございました! (2019年12月7日 12時) (レス) id: ad9f3afa3e (このIDを非表示/違反報告)
あんこもち(プロフ) - 鯰尾と骨喰は元大太刀ではなく薙刀では? (2019年12月7日 11時) (レス) id: 1c5e807086 (このIDを非表示/違反報告)
高橋かかし(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります´ω`* (2019年8月2日 13時) (レス) id: ad9f3afa3e (このIDを非表示/違反報告)
0dh38w152yz4d3p(プロフ) - とっても面白いです!更新楽しみにしてます(*^^*) (2019年7月31日 16時) (レス) id: b48a4a1bf4 (このIDを非表示/違反報告)
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