15話 ページ13
「天使を悪魔にしたのはこの国よ。貴方はそんな子を罰せる？」
悲しげな眼差しに、思わず胸が跳ねた。
「貴方はその亡霊を捕まえてどうするつもりだったんですか」
「決まってるじゃない。…終わりにするのよ。全てを」
悪魔は昔、天使だった。
その言葉が妙に耳に残る。
「ふふ。でも、
マカロンを頬張るレディは、挑戦的な視線をアルバートに向けた。
「このロンドンで起こる犯罪のほとんどは犯罪卿の手によるもの。と、まで言われているのなら彼とコンタクトを取るのが一番かと思って。」
成る程。
わざわざ呼び出された事に、ようやく納得がいった。
彼女は犯罪卿の力を利用したがっている。
「アル、
さて、どうするか。
アルバートは微笑みの下でその頭脳を忙しく動かしていた。
レディを見送ったタイミングで、馬車を引いたルイスが現れた。
「やあ、ルイス」
「お疲れ様でした、兄さん。ボンド。どうぞ」
冷たさを感じさせる程、整った顔立ちのルイスの横顔。ウィリアムとは違い愛想笑いさえ滅多に見せない。
悪魔は昔……。
出会った頃、既にウィリアムとルイスは今の姿だった。
自分と出会う以前…。
「兄さん？」
いつまでも馬車に乗り込もうとしないアルバートにルイスは振り返った。
「ルイス。悪魔に堕ちた天使は、いつか主のもとに戻れると思うかい？」
わかっている。
彼女は人の心を操ることに長けている。
そのワードに囚われると言うことは、既に…
「戻る必要がありますか？」
目が覚めるほど迷いのない答えだった。
ふと笑みがこぼれる。
そうだ。我々に迷いなど必要ない。
「ああ。その通りだ」
馬車に乗り込む、その目の端に場にそぐわない男の姿が写った。
シャーロック・ホームズ。
特に問題はないと判断し、泳がせておいたが、今日の報告を聞いて彼女がどう動くのか。
いや、犯罪とは無縁な、善良な市民である彼女では、これ以上動きようもないだろう。
が。
たまに突拍子もないモノを引いてしまうところが恐ろしい。
視線を前方に向けると、ボンドがそれとなくシャーロックを気にしているのがわかった。
出会いと別れの季節は過ぎ、もうすぐ、情熱の季節がやって来る。
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ゆりあ(プロフ) - 一気読みしてしまう程素敵なお話、ありがとうございます！各キャラが光り、ロマンスと悲劇、そしてシャーロック・ホームズのシリーズ独特の空気感が本当にバランスがよく混ざっていて、1回だけの評価じゃ物足りないです。これからも楽しみにしています！ (2020年11月3日 9時) (
レス) id: 45a22d77c5 (このIDを非表示/違反報告)
may - 面白いです！ (2020年6月23日 12時) (レス) id: f06d3bd476 (このIDを非表示/違反報告)
瑠奈(プロフ) - 面白くて最初から一気読みしました！オリジナルの要素が面白く、かつ世界観やキャラの雰囲気はそのままで、これから先もとっても楽しみです。星10を1回しか付けられないのが残念です。応援してます！ (2020年6月17日 21時) (レス) id: a9fe05af76 (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - とても素敵なお話に一気に読んでしまいました。とても2人の行く末がきになります！お身体に十分気をつけて、頑張ってください。 (2020年4月4日 19時) (レス) id: e522c50a47 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ななしさん» ななし様へ ご指摘ありがとうございました。訂正しました。 (2020年3月31日 17時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
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