僕はアンプロンプチュ (ページ35)

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なんだかんだ当日は出番まで二人でカップラーメンを食べたりと緊張感のない過ごし方をしていた

しかし、先輩は慶君が見に来たという連絡を受け取るとともになんだか気合が入ったようで一気に緊張した面持ちになっていた

『はあ、カップラーメンなんか食べるんじゃなかったなぁ、、気持ち悪い…』

『そんなに緊張しなくても…大丈夫ですか？水買ってきましょうか？』

『大丈夫。家から水筒持ってきたから…』

そう言って先輩はトートバッグの中からポットを出して飲むけれど、飲み口の隙間から水がポタポタと溢れ出して危うく衣装にかかりそうなところだった

『先輩！気をつけてくださいよ！ちょっと落ち着いてください』

『…ごめん、、』

『珍しいですね、先輩がそんなに動揺するなんて』

『まあね…百万かかってると思うと…なんだか心臓が痛いわ、、』

『それはそうですけど…』

本当は俺も緊張しているけど、ここで俺が先輩よりも緊張して、挙動不審になってしまえばそれは先輩にもっと負担をかけてしまうことになるなと考えてなんとか気持ちをコントロールする

『ほら、落ち着いてくださいよ』

俺はそっと先輩にその辺にあったお菓子を投げつける
ビターチョコだから先輩の興奮も少しは治るんじゃないかな、、

『ありがとう…まあ、優勝するしないは関係ないよね。今日は精一杯楽しんでさ…』

『優勝できますよ。それで、百万も俺らがもらいますよ』

『矢花珍しく強気ね…』

『自信があるんです』

そうは言ったものの、前の出番の人達がなかなか上手くてまた空気が悪くなる
…だけどもうそんな事で怯む俺ではない

『ほら先輩、行きますよ』

『…うん』

去年も出たこのフェスにまさか今年は先輩と二人で出るなんて思っても見なかった
…きっと、先輩とこうして一緒に音楽をやるなんてこれが最初で最後なんだろうな、、と思う

あ、慶君だ…先輩のお母さんもいるし、こんぴー、琳寧君、髙さん、大光、大橋さん、そして

嶺亜君も来てる

先輩が嶺亜君を見て動揺しちゃうんじゃないかな、なんて考えてたけどそんな心配は無用だった

先輩の目、超キラキラしてる…

こんな先輩は本当に珍しい。アドレナリン出てんだろうなぁ、、

そして、先輩が話し始める

『はじめまして！私達、特にバンドとかは組んでないんですけど賞金目当てで来ました！』

それ言っちゃうかよーって周りから笑いが起こる
なんだか本当にスター性のある人だな、、