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それから、俺と先輩の猛練習は始まった


『矢花!ご飯作ってきた!』

『またですか…』

『一緒にでてくれるお礼!』

『大橋さんを射止めるための練習でしょ?』

『そうとも言う、、』


ある日は、タッパーいっぱいに詰め込まれたピーマンの中に墨が入ってる謎の料理を持ってきた


今思えば、多分あれはピーマンの肉詰めだったのだろう



『矢花!練習終わったらこれ食べよ!』


また別の日は、形がぐずぐずの岩石のような唐揚げを持ってきた
辛うじて唐揚げだとはわかったけど、申し訳ないけどやっぱりあまり美味しそうな見た目ではなかった



『二番のサビ入るところ、もうちょっと余韻つけられない?』

『わかりました、やってみます』



だけど、普段のちゃらんぽらんな先輩からは想像できないくらい練習には熱心だった
それはただ単にお金を狙う人の目ではなくて音楽を心から楽しんでる。そんな目だった



『よし、終わったからご飯にしよ!』

『うげぇ、またですか、、』

『何その反応?まずいって言いたいの?』

『いや不味くはないんすけど、、見た目がいつもショックなもんで、、』


先輩は一言ふんとだけ言うとトートバッグの中をゴソゴソしてから大きなタッパーを取り出した



『…ミートソース?』

『そう』

『どうしたんすか、見た目普通ですよ?』

『だーかーら!普通だったでしょ!今までも』



そして、本番を翌日に控えたまたある日、俺の家に恐ろしい回数のチャイムを押したあとバタバタと入ってくる先輩を見た


『大橋さんに告白された!!』

『えっ、ほんとですか?』

『うん!これは胃袋掴んだかな〜』



そう言って先輩がまたトートバッグから出したタッパーの中には、十分すぎるほどに美味しそうなロールキャベツがつめられていた


『…上達がすごいですね、、』

『ね!おいしそう?』

『すごく、美味そうですよ』

『本当に?じゃあ食べる?』

『食いたいっす!』



わかったーって言いながら皿に移す先輩と、明日のためにひたすらギターをいじる俺

なんか、先輩が住み着いてるみたいで居心地悪いな、、



『はい。ついでに味噌汁も作ってきたから』


そう言うと先輩は大きなポットをこちらに見せてきて目の前で注いでくれた


『今更って思うかもしれないけど本当にありがとう。矢花がいなかったら家は終わってたよ、、』

『お礼は優勝してからにしてください?』



そう言うと先輩と固く握手をしてみたりした

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作者名:マリエ | 作者ホームページ:http://commu.nosv.org/p/taka231  
作成日時:2022年4月15日 22時

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