僕はアンプロンプチュ (ページ19)

今日:3 hit、昨日:6 hit、合計:20,715 hit

．ページ19

『ほら、嶺亜挨拶して！』

弟がいるのにどこか妹気質で、人のお世話をする立場には到底なりそうにない先輩のこんな姿は初めて見た

嶺亜君から送られてきた楽譜を元に各々練習はしていたのだけれども、個人でやってるだけでは意味がない。合わせて練習をしないと！

…と、いうことである日、先輩が部室に嶺亜君を連れてきた

琳寧君は呑気に久しぶり〜なんて言うだけだし、大光はあの歌詞すごいっすね〜なんて思ってもないことをベラベラと喋っている

『…来たばっかで申し訳ないんだけど、そろそろ合わせない？』

微妙な空気は髙さんの鶴の一声で変わり、俺らはついにセッションをする事となった

とりあえずそれぞれが持ち場について嶺亜君の掛け声を待つ

『いくよー』

俺らが奏でるメロディーに嶺亜君の歌声が乗る
…嶺亜君、歌上手いんだな、、

『ストップストップ！…ドラムのお前。ズレてたよ。わかってないの？』

『ま、まあまあ！初回だしね、、』

大光は少しびっくりしたような顔をしたけど、先輩が物陰から必死に謝る様子を見て素直に頷いていた。意外と大人なんだなあいつも…

『じゃあ次、行くよ！』

再び演奏を始める。自分で言うのはなんだけどなかなか良い演奏じゃない？…俺らってもしかして相性良い？

皆んな嶺亜君の為に必死になって動いている先輩を見て、そしてそんな先輩の為に自分を殺して必死に嶺亜君のサポートをしてる

個性を出す事だけが全てじゃない。

今になってそれを嫌なほど痛感している。嶺亜君の歌詞は確かに恥ずかしいし、厨二と言われれば厨二なのだけれど俺らがサポートに徹すればその良さが十分に生きるという事がわかった

『一回ストップ！』

嶺亜君が突然演奏を止めた
…ひえー、また怒られるのかな、、

『超良いじゃん！最高だよ！』

予想外の反応に俺らは目が点になってしまう。物陰から心配そうに俺らを覗いていた先輩もビックリしているようだ

『…なんか当日が楽しみになってきたよ』

嶺亜君のしみじみといった様子の顔に俺らは心を動かされそうになる

…そうだよな、嶺亜君。先輩が来るまでずーっと一人だったんだもんな、、

『私もフェス見に行くからね！…彼氏と！』

『えっ？先輩彼氏いるんすか？』

『あれ言わなかった？矢花と合コン行った時にいた高橋恭平君！』

『たかはし…あ、あ〜！』

先輩の事少し見直したのにこの環境で彼氏のことを話しちゃう空気の読めなさは健在なんだな、、