僕はアンプロンプチュ (ページ20)

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本当はもっと練習をする予定だったけれども、各々の予定が重なりうまく会えなかった俺達は十分な練習がないまま本番を迎えてしまった

『矢花動かない！』

『何ですかこれめちゃくちゃくすぐったいんすけど！』

『パウダー塗ってんの！あんた！自分でメイクできないって言うからやってあげてんのに文句言わない！』

嶺亜君から大光に至るまで、それぞれ自分達で慣れた手つきでメイクをこなしているんだけどそんな事ができない俺は仕方なく先輩からの施しを受けていた

『ていうかさっきの大橋さんのバンド、矢花いた？』

『失礼だなぁ、いましたよ！』

俺は結局、大橋さんのバンドのサポートメンバーとして出る事となった

大橋さんは歌が上手で、卒業生でも何でもないのに大学の女性の心を鷲掴みにしていた
そして、在学生である俺には皆、目もくれていなかった

『大橋さんカッコよかったよね、、』

『もう、先輩もですか〜』

『そりゃあそうでしょ。矢花、その髪型やめなよ。ステージで埋もれてたよ？』

先輩が俺の目にかかる前髪をパサっといじる
久々に視界が開けて何だか新鮮だ

『ほら、おでこにもパウダー塗るから前髪押さえといて』

『…わかりました、、』

先輩は慣れた手つきでブラシを俺の額で左右させる
何だかくすぐったいけど、やってもらっている手前笑うわけにもいかない

『そういえばさ、バンド名。何にしたの？』

『あれ？言いませんでしたっけ？』

『聞いてないわよ！』

俺は近くにあった紙にペンでバンド名を書き、先輩に見せた

『6 MEN 侍？』

『はい、どうですか？』

『いやどうですかも何も、いいんじゃない？、、としか言えないけど、、』

侍という言葉を入れたいという嶺亜君のよくわからない提案と男だしMENでいいんじゃね〜なんて言う大光のいい加減な発言により俺らのバンド名は決まった

『はい、終わり。まあまあいいんじゃない？頑張ってね！』

『ありがとうございます。…ていうか、先輩も出ればいいのに、、』

『私、バンド入ってないし？』

『俺らと一緒にとか、、』

『嫌よ！私、MENじゃないし！』

先輩が大きな声で笑う。あー、そんなに大声で笑ったら……ほら、冷たい視線が向けられてるよ、、

『ほら、時間なんだから早く行きなよ。一番前で矢花の事見てるからさ！』

『嶺亜君とか髙さんとかいるけど俺でいいんすか？』

『何言ってんの！余計なこと考えてる暇があったら早く行きなさい！』