僕はアンプロンプチュ (ページ22)

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『…報告？なによそれ、今しなきゃいけないの？』

確かに、、この祝杯ムードの中真剣な顔をした嶺亜君は少し浮いていたし、そのせいなのか空気がガラリと変わってしまった

『あっ、俺友達来てるから挨拶してくるわ！』

大光が空気を読んで楽屋から出ていくと、こんぴー、琳寧君、髙さんと続いていく。俺もまた出て行こうとすると後ろから急に手首を掴まれた

『矢花は残って』

『えぇ？嫌っすよ』

嶺亜君に聞こえないように小声で断った

だけど、やっぱり俺は男で先輩は女だ
男は女の困り顔に嫌と言うほど弱い

仕方なく後ろのベンチに座って待機することにした

『俺さ、彼女出来たの』

『…えっ？嘘でしょ？』

『本当だよ。写真見る？』

…嶺亜君、、どうしてそれをわざわざ先輩に言うんですか？
当てつけ？…それとも、何か別の理由がある？

『…矢花も見る？』

嶺亜君が少し悲しそうな顔で俺にそう尋ねた
…そんな悲しい顔するくらいならこんな事しなければいいのに

俺は先輩の後ろから軽く嶺亜君のスマホを覗き込む
そこには、高そうな料理の前で微笑む可愛らしい女性が写っていた

…ひどい

あまりにもひどすぎる

先輩にそっくりだ

先輩の事が少し心配で横顔を覗き込むけど、思いの外ショックというショックは受けてない様子だ
…だけど、どこか腑に落ちないといった表情をしている

『…A、、。好きな人はできた？』

嶺亜君が優しい表情に戻って先輩に問いかける

『、、彼氏は出来たよ』

『その人の事好きになれた？』

どうしてこんな事聞くんだ…流石に先輩が可哀想な気がして何とかしてこの場から離れさせてあげたいと親心のような気持ちが発動するけど、先輩は何故か俺の方をチラチラと見ていた

『…Aの事は大切に思ってるよ…でも、やっぱり妹のようにしか思えない。それをわかってほしい』

なんか、もしかしてこれって茶番？

『…嶺亜お兄ちゃん？』

ほら！先輩もふざけてるしやっぱり茶番じゃん！

…もしかして、嶺亜君は先輩がまだ自分の事を好きだと思ってあきらめさせるために彼女の写真を見せた？

だけど、先輩はもうそこまで嶺亜君のことを好きじゃなかったってオチ？

二人の少し悲しそうな目は見ないフリをして俺も何となく笑った

すぐに大光や琳寧君が帰ってきて元通りの空間になったけどあの時感じた違和感が喉につっかえてずっと一人で悶々としてしまった