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『…私、止めてくる』
明らかに青白い顔の一年生の男の子に寄ってたかって酒を強要する先輩達
…あの子、もしかしてもう飲まされてる?
…止めてあげないと
『Aは正義感が強いタイプなんだね〜、すごいすごい』
そう言って、澄ました顔で他人事のように私の頭を撫でる嶺亜
この人なんでこんなに冷たいの?
私は、自分に喝を入れると現場に向かって歩いた
『…君、新入生?』
悪ノリのひどい先輩のグループの一人が私に声をかけてきた
…うん、いいチャンス
このまま意識の矛先が私の方に向いてくれてるといいんだけど…
『はい、一年です』
『へぇ〜可愛いね、よかったら君も一緒に呑む?これ、日本酒だけど』
周りから女の子に酒飲ませるなよ〜って宥めるような声が聞こえてくる
男だからとか、女だからとか、そういう問題じゃないでしょ?こういう人種ってどういう頭してるの?
『あ、あの。その人、具合悪そうだから帰らせてあげたらどうですか?』
『ん?こいつ?…あぁ、いつの間にかそんなにベロンベロンになってたのか。いいよ、お前帰れば?』
一安心と思った時に間髪入れずにでもその代わりなんて声が聞こえて思わず身構える
『君、一緒に飲もうよ。それなら、こいつ解放してあげてもいいけど?』
『は?』
『わかる?…まあ、こいつもう飽きたからさ君が代わってくれるのは願ったり叶ったりなんだけどねえ』
…どうしよう
ここで私が飲酒を拒否ればこの人は更にお酒を飲まされて…アルコール中毒になって下手すれば…死んじゃう、なんて、ことも…
もし私がこの人達と一緒にお酒を飲めばこの人は解放される…
『…わかりました、少し…なら』
『お、いいね。じゃあこれ飲む?俺の飲みかけだけどいいよね』
私は先輩からグラスを受け取り覚悟を決めて飲もうとする
グラスの淵に口をつけようとしたとき
…横から手が掴まれて、グラスを奪われた
『あ〜、うまっ』
『あ〜れーあさんなんのお酒飲んでるの?琳寧も飲みたい!』
『これ?…あ、ねえそこのお前。これ、名前なに?』
嶺亜は私の手からグラスを奪うと勢いよくお酒を喉に注ぎ込んだ
驚いている私をよそに嶺亜は先輩達と話し込んでいるようだ
『これは…日本酒だけど…』
『そう、琳寧。日本酒だってよ、…あとあの子、病院まで連れて行ってあげて。なるべく早くね』
嶺亜がそう言って隅で潰れていた一年生を指差した
…胸の奥が疼いて、恋に落ちる音がした
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マリエ(プロフ) - ハルカさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願い致します! (2022年4月9日 16時) (レス) id: c6cf29b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - 良すぎて一気読みしてしまいました……お忙しいかとは思いますが続き楽しみにしております! (2022年4月9日 2時) (レス) id: 17cc79c11f (このIDを非表示/違反報告)
マリエ(プロフ) - 松さん» そのように言ってくださって本当に嬉しいです!完結まで是非宜しくお願い致します。 (2022年3月29日 19時) (レス) @page35 id: c6cf29b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
松(プロフ) - はじめまして!めちゃくちゃ面白くて更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2022年3月28日 23時) (レス) @page35 id: 309f0f86b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マリエ | 作者ホームページ:http://commu.nosv.org/p/taka231
作成日時:2022年2月23日 16時