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…想像通り、といった所であろうか
もちろん嶺亜から連絡が来る事は無かったのだろう
矢花がそれをはっきり言う事は無かったけど、矢花が私の考えている事を手に取るようにわかると言ったように私だって彼の心情を何となく読み取ることができる
嶺亜の話を出そうとするとすぐに話を逸らす彼を見た日、疑惑は確信に変わった
私は一心不乱に練習を続け今日まで持ち堪えたが、お気に入りのドレスに身を包んだ自分を見る度に何度嶺亜が来てくれたらと思ったか計り知れない
『…先輩、お昼買ってきましたけど何か食べます?サンドイッチとおにぎりがありますけど』
『ありがとう。後でもらおうかな…そこ置いといてもらってもいい?』
『わかりました。頑張って下さいね』
『…うん』
矢花には申し訳ないけど、私には嶺亜がいないとダメだ。嶺亜に頑張ってって冷たい、でもどこか愛のあるような顔で言ってほしい
…こんな暗い気持ちじゃ、演奏に支障が出るよね、、
私が今日演奏するドビュッシーの『喜びの島』
この曲はプレイボーイであったドビュッシーが前の妻を捨てて後に二人目の妻となる女性との逃避行を背景としている
まあつまり愛の喜びに満ち溢れている曲な訳だ
『…私と全然違うじゃん』
この曲を書いた時のドビュッシーと今この曲を演奏しようとしている私とでは皮肉にも違いすぎる、、
だけど、こんな事を嘆いていては仕方がない
早く楽屋に行かないと、、
『だけどこのドレス本当に綺麗だよね……ん?…あれ?』
一度体の近くに近付けたドレスを離そうとしたときになんだか突っ掛かりを感じた
恐る恐る下を見ると、私のショルダーバッグにドレスの繊維が絡まっていた
、、、どうしよう。
何となく取れないかガチャガチャとやってみるけど頑固に絡みついた繊維はうんともすんとも言わなかった
…一か八か
少しだけ力を込めて繊維と鞄を引き剥がす事にした
ビリッ、ビリリ
見なくても音だけで嫌な音がしたことがわかった
覚悟を決めてドレスを見てみると、スカートの薄い布が裂けていて血の気がみるみる引いていくのを感じた
『嘘…でしょ』
…どうしよう、これから本番なのに、、もっと丁寧にやればよかった
覆水盆に返らず
起きてしまった事はもうどうしようもない、それよりどうしようか
とりあえず、会場の外に向かって矢花を探す事にした
矢花がどうにかしてくれるとは考えてなかったけど一縷の望みをもちひたすら走っていた
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マリエ(プロフ) - ハルカさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願い致します! (2022年4月9日 16時) (レス) id: c6cf29b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - 良すぎて一気読みしてしまいました……お忙しいかとは思いますが続き楽しみにしております! (2022年4月9日 2時) (レス) id: 17cc79c11f (このIDを非表示/違反報告)
マリエ(プロフ) - 松さん» そのように言ってくださって本当に嬉しいです!完結まで是非宜しくお願い致します。 (2022年3月29日 19時) (レス) @page35 id: c6cf29b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
松(プロフ) - はじめまして!めちゃくちゃ面白くて更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2022年3月28日 23時) (レス) @page35 id: 309f0f86b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マリエ | 作者ホームページ:http://commu.nosv.org/p/taka231
作成日時:2022年2月23日 16時