キミと月のブランコ。４ (ページ45)

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＂離婚することになったから。＂

パパから突然の連絡。

妹と弟を放っておけなくて、慌てて帰った実家。

喧嘩に耐えられなくなったパパとお母さんは別れることを決めたって。

何度も何度も話し合って出した結論だったから、私は何も言えずただ頷いた。

それは妹と弟も同じだったようで、反対することもなく意外にもあっけらかんとしてた。

だけど１度は家族になったパパとは、これでお別れなんて寂しくて。

また地元に戻った時はご飯に行こうって約束して実家を出た。

荷物を抱えて並んだ新幹線乗り場。

後ろに並ぶ女の子たちの会話が嫌でも耳に入ってきた。

＂買った？隆二のアルバム！＂

会話の内容が隆二だったから。

＂買った買った！最後の曲めっちゃ良くない？＂

＂なんだっけー。カバーしたんだよね？＂

＂そうそう！あの隆二の声超やばい！＂

…………気になる。すごく。

席に座って急いで取り出した携帯。

つい、聞きたくなった隆二のアルバム。

せっかく貰ったのに、ダウンロードして。

曲目を読んでいた見つけた１曲。

＂Versace On The Floor＂

私が好きな曲。

震える手でイヤホンを付けて、再生ボタンを押した。

流れてきた隆二の甘い声。

やっぱり本人よりセクシーに歌ってる。

そういえば隆二と初めて会ったのも新幹線だったね。

偶然隣の席になって、この曲を一緒に聞いたよね。

覚えてるかな、隆二は。

あの時は隆二のことなんて知らなかったし、もう会うこともないと思ってたのに。

今ではすごく、すごく大きな存在で。

思い出したら、また涙が溢れ出る。

声が漏れないように口に手の甲を押し当てて、必死に堪えた。

ちゃんと終わらせたはずなのに。

隆二の歌声が私を追いつめる。