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「もしもーし、今どこ?」
「電車に乗るとこ!隆二は?」
ドレスの試着を終えて駅に着いたとこで隆二からの電話。
次の予定は指輪をオーダーする為に隆二とジュエリーショップへ。
休日は式の準備で大忙し。
「俺もう店に着くんだけど、Aはまだかかるよね?」
「うん、30分くらいかかるかも。」
「あっ、クローバーって店の近くだよね?」
「あー、そうかも!」
「じゃあクローバーで待ってるよ。」
「えー、ずるい!私にもドーナツ買っといて!」
「いいよ、何がいい?豆腐のきなこは絶対でしょ?」
「うん、絶対!あとはー……今って何があるんだろう。」
「適当に買っとくよ。メープルか何かでいいんでしょ?」
「うん!」
「はいよ。気をつけておいで。」
「はーい。ダッシュで行く!」
「転けそうだから急がないで。ゆっくりでいいよ。」
私の事を知り尽くしてる。
電話を切って電車が来るのを待つ間、今さっき交わした隆二との会話を思い返す。
私、普通におねだりしてた。
ドーナツ買っといてって。
可愛くもなんとも無い言い方で。
結局ダイニングテーブルをおねだり出来ずに数ヶ月。
自分で買う決心も、おねだりする決心もつかないのはお高い値段のせいなのかも。
ただでさえ結婚式にはお金がかかるのに、余計な出費は避けたい。
芸能人との結婚、油断は大敵。
いつ何が起こるか分からないんだから。
シロガネーゼには憧れるけど、カネガネーゼにはなりたくない。
閉まるドアにご注意しながら乗り込んだ電車。
日曜の午後にしては空いていた。
座った席は背中から陽射しが差し込み、ポカポカといい気分。
それに加えて耳に着けたイヤホンからは隆二の優しい歌声。
心地よい揺れと心地よい歌声で、久しぶりの隆二との待ち合わせに心が弾む。
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作者名:taka | 作成日時:2016年12月6日 22時