月とオレンジ 13

518 会いたい ページ27

「あの…」




何を話したらいいか分からない






違う、本当は…聞きたいことがたくさんある







宮田先輩と萌ちゃんのことは覚えていた






だから







本当に私を覚えてないの？って

私はあなたの恋人だよって






あの日、あなたは何を話そうとしていたの？





咲良さんの話は本当？





彼女と…続いてたの？






…お腹の子は…







『俺を信じて』






あのときの言葉の意味は…







でも…







『無理に思い出させようとするのはよくない』







私のことを思い出せなくなるかもしれない






だから…




…。









太「…えっと…Aちゃんは

俺と親しかったのかな…」







「え…」








太「だって

一昨日も今日も来てくれたから。」








そう






そうだよ





親しいなんてもんじゃなくて…私はあなたの…









太「…ごめんね。





思い出せなくて…」







目の前にいる太輔は私の知ってる太輔じゃない







でも、優しい言葉に出会った頃を思い出して

泣きそうになる








太「あ、ごめんなさい//

俺、何か変なこと言っちゃった？」







慌てて近くにあったティッシュボックスを

手渡す姿も…太輔だ








「…言ってません。」







首を横に振る








太「そっか。…よかった」






ホッとしたように微笑む







太輔…







「あの…また、お見舞いに来ます。」







太「…。」







「あ、ほら。会社の仕事のこととか//




気になるかなって…」








少し戸惑う表情にそう付け足すと







太「あぁ、そっか。ありがとう。」






ふわって笑った







「じゃあ…お大事に」







太「ありがとう。…また。」








また…君のその言葉に私の胸は踊った








自分を忘れてしまったことも…

咲良さんとのことも






そんなこと頭のすみにいってしまう程







君にまた会えることが私は嬉しかった








思い出してくれなくてもいい






君に会いたい







ただ、それだけだった

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