嘘つきな僕ら 18

845 汚い本音 ページ42

会話が途絶えると

耳に当てた電話から

ジージーという小さな電波の音が

聞こえた









「葵さん……大丈夫？






雑誌で見たからさ。」









勇気を出して切り出した









太輔「……うん。

……この前、退院したよ。






完全に元気ってわけじゃないけど

まぁ、少しずつ。」









退院した……事故での流産は本当だったんだ









「今も、太輔の部屋に居るの？」









太輔「いや……今は別に部屋を借りてる。」









同棲が解消されてることに

一瞬胸に沸き立つものがあった









でも……









太輔「……離婚調停中で

ちゃんと離婚が成立するまでは

不利になるかもしれないからって……」









……そういうことか








離婚して……太輔と




何期待したんだろ……私









太輔「葵のこと、心配で連絡くれたの？」








黙りこむ私に優しく聞いた









……心配……だったんじゃない……








私は……







太輔の言葉に自分の汚い感情に直面した









「……うん。





……本当に残念だったね。」









嘘をついた








そんなこと、本当は全く思っていないのに









太輔「……そうだね。







葵は……楽しみにしてたから。」








葵……は









「太輔は？」








思ったと同時に口から出ていた









太輔「……え」









戸惑うような声がした








ヤバイ……変なこと聞いちゃった









太輔「……俺は








……俺も、楽しみにしてたよ。」









……。








……。









葵「……太輔、お風呂は？」







沈黙が続くと、電話越しに葵さんの声がした









太輔「あ、今行くわ。






……ごめん。今、葵の部屋で……」









葵さんの部屋









同棲が解消されたって

二人が付き合っていることには変わりはない








「そっか……ごめん。電話なんかして。」








太輔「いや……まぁ、大丈夫。」









困ってるんだ……

そう分かっていても、サヨナラが言えない








……。








……。









「太輔……今、幸せ？






……葵さんといて








……本当に幸せ？」









何聞いてるんだろ……って、自分でも思った

こんなこと聞いてどうすんの









太輔の真意は別にある……





そんな都合のいい解釈……あるわけないのに

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