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しかし、男にも「大切」を学ぶ時が訪れました。
いくつも季節が回った、ある日の戦い。
女が、あの強い女が、味方を庇い、斬られたのです。
真っ赤な血が、どくどくと溢れました。
女の体がゆっくりと倒れました。
それを見た男は、敵を斬り捨て、駆け寄りました。
しゃがみこみ、バクバクとうるさい心臓の音を遠くで聞きました。
自然と応急措置をしようとした男の手を、息も絶え絶えな女が止めました。
男にも、女にも分かっていました。
もう助からないのだ、と。
弱々しく、それでも女は言いました。
いつも通りに、まるで戦闘の最中でないように。
「...お前は、まだ...っ、
まだ、人間が...嫌い、か?」
「...。」
いつも通りに答えようとして、
男はできませんでした。
女が死ぬと分かった途端、違う言葉が出てきました。
「...はい、大嫌いです。...でも...。」
あなたは、嫌いじゃない。
「......、そうか...。」
女は、初めて返事を返しました。
そして。男の顔を見て、穏やかに小さく、
笑みを浮かべました。
目を閉じ、息をついて。
静かに女は、動かなくなりました。
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孤独な月 - 虎の月さん» ありがとうございます。少しでも、あなたの心に響いたのならば幸いです。暫く公開しますから、良ければまた来てください。 (2020年11月6日 9時) (レス) id: 1bda2ccaaa (このIDを非表示/違反報告)
虎の月 - いやはや...こんな深いお話は始めて見ました...思わず涙が...とても心温まる作品を本当にありがとうございます。期間限定とは...惜しいものです... (2020年11月3日 15時) (レス) id: 23f1f79e2c (このIDを非表示/違反報告)
孤独な月 - fubukiさん» ありがとうございます。マジですか、嬉しいです、良かった。 (2020年10月26日 1時) (レス) id: 5a3c1aad01 (このIDを非表示/違反報告)
fubuki(プロフ) - あ………………好きです。 (2020年10月25日 21時) (レス) id: 8d00889b6b (このIDを非表示/違反報告)
孤独な月 - ビードロさん» 意味、分かりましたか?...うふふ。 (2020年10月23日 8時) (レス) id: 1bda2ccaaa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:孤独な月 | 作成日時:2020年10月15日 23時