番外編 「とある隊員の思い」 ページ23
人を倒すなど、鍛練を積めば平気だ。一人の隊員は考えていました。
彼は、白い髪が綺麗な女の部隊に所属する、戦闘員でした。
彼はリーダーである女を、ずっと慕っていました。
冷酷だと言われている女は、実は部下を大切にしているのを、知っているからです。
彼も、一生懸命刀の振りを練習していてアドバイスして貰ったりしました。
女が、いるから。戦いたいと思っていました。
しかし、ある時一人の男が副リーダーとなりました。目に光がない、無口な男でした。
女と男が共に行動するのが常になりました。彼は、見ていて僅かな怒りすら覚えました。
何故、リーダーはあの男を選ぶのか。
彼は、男が嫌いになりました。なるだけ近寄らないようにしました。
自分より、弱いのに。...その考えが間違っていたと気付くのはまだ先でした。
***
...何故、何故、何故だ。
何故、刀が握れない?
雪が降っている、戦いの日。彼は初めて実戦に参加しました。
なのに。手の震えが収まりません。寒さのせいではないのです。
敵の姿が見えました。味方が斬られるのも見えました。
飛び散る赤い血飛沫。それは、確かな恐怖でした。
あんなに素振りをしたのに。あんなに色々な角度で斬る方法を学んだのに。
何故、体が動かないのでしょう?
一人の敵が、自分に刃を向けているのが見えました。
銀光りするそれを見ても、刀が上がりません。
「...ぁぁ。」
何も、出来なくて死ぬのか。
少しばかり、あの女を頭に浮かべました。ただ目を見開いて、降ってくる刃を見ていました。
その瞬間でした。目の前に、白い髪が揺れました。
「...ぇ。」
刃が、割り込んできたその人に食い込み、赤い液体が散りました。
生暖かいそれを頬に浴び、漸く彼は理解しました。
リーダー...?!
驚いたのに。体は動かず、声も出ず。ただ膝が崩れて座り込みました。
倒れた体を受け止めも出来ません。
そして、そこに現れたのは。彼が大嫌いな男でした。
躊躇いもなく、一閃。敵を切り裂き、男は女に駆け寄りました。
彼には、見向きもしないで。
何故、自分は。こんなに傲っていたんだ?
自分等。
遠い存在だったんだ。
彼は、初めて男の表情が歪むのを見ました。女が微笑み、息絶えるのも。
それは明らかに
自分には入れない空間でした。
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孤独な月 - 虎の月さん» ありがとうございます。少しでも、あなたの心に響いたのならば幸いです。暫く公開しますから、良ければまた来てください。 (2020年11月6日 9時) (レス) id: 1bda2ccaaa (このIDを非表示/違反報告)
虎の月 - いやはや...こんな深いお話は始めて見ました...思わず涙が...とても心温まる作品を本当にありがとうございます。期間限定とは...惜しいものです... (2020年11月3日 15時) (レス) id: 23f1f79e2c (このIDを非表示/違反報告)
孤独な月 - fubukiさん» ありがとうございます。マジですか、嬉しいです、良かった。 (2020年10月26日 1時) (レス) id: 5a3c1aad01 (このIDを非表示/違反報告)
fubuki(プロフ) - あ………………好きです。 (2020年10月25日 21時) (レス) id: 8d00889b6b (このIDを非表示/違反報告)
孤独な月 - ビードロさん» 意味、分かりましたか?...うふふ。 (2020年10月23日 8時) (レス) id: 1bda2ccaaa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:孤独な月 | 作成日時:2020年10月15日 23時