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見すぎていたらしい。
真選組の人が鋭い目つきで問いかけて…もはや尋問だ。
目をつけられたんだろうか。
しかもスカーフがひらひらとなびいているということは、幹部の一人だろう。
路上喫煙はどうかと思うが、煙草の煙がこちらにこないよう配慮してくれるあたり、おそらく悪い人じゃない。
それでも優しくしてくれた桂さんを売る気にはなれず、とっさに知らぬふりをした。
「…いいえ。世の中こんなにも指名手配犯がいたのかと感慨深く見てました。この桂って人、一番イケメンですよね。」
「まあ確かに女みてぇな顔つきではあるが…こいつァ伝説の攘夷志士。危険な男だ。最近じゃ大人しくしてるが、昔はそりゃあ派手に天人どもを斬り伏せてきたもんだ。」
「へえ…。」
「片っ端から斬るような男じゃねぇが…ま、お前には関係のない話だ。」
一方的に話し、真選組の人はパトロールに戻った。
彼もなかなか整った顔をしていたが…頭のキレそうな男の人だった。
でもぎりぎり隠し通せたんだよね?多分。
男が去った方から視線を戻せば、昔はそりゃあ派手に天人どもを斬り伏せてきた…らしい、桂さんの手配書。
そうかもしれないとどこかでわかっていたからか、あまりショックは受けなかった。
私の中で信用できる優しい人だという認識は変わらずそこにある。
もし未来ある誰かの命を奪ってきたとしても、私の今を救ってくれた桂さんを信用したい。
だから、お願い桂さん。
私を一人にしないで。
そんな願いも虚しく、その日桂さんが見つかることはなかった。
最初は一日だけでも一緒にいて欲しいなんて言っていたくせに。
人は満ちることなく、欲深くなるというのは本当らしい。
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作者名:たいる | 作成日時:2022年1月25日 15時